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8月に先行予約しておいたCD "Yardbirds '68" が到着した。 jimmypage.comに直接オーダーしておいたので、アマゾンなどの一般流通に先駆けての入手だ。 CDは二枚組で、一枚目はライブ、二枚目は未発表のアウトテイク集になっている。 ライブ音源は1968年3月、ニューヨークのアンダーソン・シアターでのもので、過去に本人たちの許可なくリリースされた曰く付きの "Live Yardsbirds!" と同じ内容である。 ライブのメンバーは、ジミーのほか、キース・レルフ(ボーカル、ハープ)、ジム・マッカーティ(ドラム)、クリス・ドレヤ(ベース)の計四人。 "Live Yardsbirds!" についてはジミー・ペイジが激怒して回収させたという逸話が残っているが、この件について相当腹に据えかねたのであろう。 今回のリリースはジミー自身がプロデューサーを担当している。 新しいCDの音質はクリアで、各楽器はステレオにミックスし直されているが、ドラムは一塊になったままなので、恐らくマスター・テープもそれ以上分離されたものがなかったのだろう。 またギターは鋭角的な音に改善されているが、ベースの輪郭がはっきりしないままだ。 ジミーの作業をしての結果であるから、これが限界と思われる。 なお、ライブのセット・リストは次の通り。
このメンバーでのライブは1968年7月7日が最後になっており、同年10月15日、英サリー大学にて、後にレッド・ツェッペリンとなる4人のメンバーでニュー・ヤードバーズを名乗った初のライブを行っている。 さらに、レッド・ツェッペリンとして10月にファースト・アルバムを録音しており、結果的にその半年前の "Yardbirds '68" は、ツェッペリン移行へ向けたヤードバーズの最後の姿を捉えた形になった。 ところで、一曲目の "Train Kept A Rollin" では "Dazed and Confused" のブリッジで知られるリフから開始され、続く "Mr, You're A Better Man Than I" ではジミーのワウ・ペダル全開のソロが展開される。後にレッド・ツェッペリンのライブでも定番となる "Dazed And Confused" では、既にジミーがバイオリンの弓を使用したギター・ソロをとっているが、当たり前ながらロバート・プラントと繰り広げたようなギターとボーカルの絡みはない。 ジミーの溢れんばかりのアイデアが詰め込まれているが、キース・レルフの力量がまったく着いていっていないことが明確にわかる。 さらにジム・マッカーティのドラムもよれており、ライブ全体を通じてスネアがもたつきまくっている。音質がクリアになるほど、ジミー以外のメンバーの演奏力の欠如が目立ってしまうのも、残酷なものだ。 後半の "White Summer" はジミーの独壇場で、後のレッド・ツェッペリンの楽曲として既に完成した姿を見せている。またCD 二枚目に含まれる "Tangerine" の原曲 "Knowing That I'm Losing You" も、ロバートのボーカルを加えれば、レッド・ツェッペリンのバージョンだと言われても納得してしまう完成度である。 はっきり言って、この二枚組は誰にでもお勧めできるような代物ではない。 しかし初期のレッド・ツェッペリンの音が、どのような経緯を経てできあがってきたのかを確認するためには、貴重な記録である。
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このところAIスピーカーが注目を集めているので、早速Google Home を入手してみた。Google HomeのセットアップやIoT連携などは様々なメディアで報じられているので、ここでは割愛する。逆に音楽コンテンツに触れたものは全く見当たらないため、これは自分で試してみるしかないと考えた。
ところでGoogle Homeは力ずくで引っ張ると、スピーカーが露出する。
スピーカーは2発内蔵されているが、はっきり言って音質は良くない。イコライザーで不自然に低音を強調し、中音域はカットしたような音になっている。もう少し言ってしまうと、スネアがフロアタムのように聴こえるのだ。
しかも外部スピーカー端子がないので、もっとましなオーディオ機器につなぐこともできない。Google Homeの現時点での利用法の大半が音楽試聴であると考えれば、これはハードウェアとして早急に改善すべきポイントであろう。今現在、この点はまもなく発売となるAmazon Echoに期待するしかない。 まあ何はともあれ、Google Homeの音楽コンテンツに対する処理能力を試してみることにする。コンテンツ・ソースとして、セットアップの際にGoogle Play MusicとSpotifyを選択することができるが、今回はGoogle Play Musicだけにしてみた。要するにGoogle HomeのAIエンジンによる音声認識能力と、Google Play Musicのデータ量ということだ。 そして今回の実験は、特にハードロックに焦点を当ててみた。
実験1 アルバム名の認識
まず有り体のところから。 OK Google、レッド・ツェッペリンをかけて。 “Stairway To Heaven” とは、あまりにも凡庸で残念。 そこで次はアルバム名を加えてみる。 OK Google、レッド・ツェッペリン ファースト(注:「I」)をかけて。 レッド・ツェッペリン「アイ」? どうやら「I」を誤読した模様。 そしてIIは認識せず、「レッド・ツェッペリン イー・リマスタードという曲はありませんでした」との謎の返答をしてきた。このまま続ける。 OK Google、レッド・ツェッペリン サード(注:「III」)をかけて。 レッド・ツェッペリン「アイアイアイ」。「I」を「アイ」と認識していることが確定。 OK Google、レッド・ツェッペリン フォー(注:「IV」)をかけて。 レッド・ツェッペリン「アイヨー」??「I」が「アイ」になるのは判ったが、「V」がなぜ「ヨー」になるのか。 次はアルバム名と曲名が同じ場合、どうなるかをテスト。 OK Google、レッド・ツェッペリン House of the Holy をかけて。 曲名ではなく、アルバムの邦題「聖なる館」として認識。頭がいいのか、悪いのか。
実験2 曲名と演奏者の認識
まず ”God Save The Queen” をどう捉えるのか確認。 OK Google、God Save The Queen をかけて。 何だ、この長い紹介は。 仕方ないのでバンド名を追加してみる。 OK Google、ピストルズのGod Save The Queen をかけて。 完璧。 続けてモーターヘッドで試してみる。 OK Google、モーターヘッドのGod Save The Queen をかけて。 またも完璧! 実験1と実験2の結論。 バンド名と曲名を指定すれば、ばっちりである。
実験3 オタク度の深さ
バンド名と曲名を指定すればほぼ認識することが判明したので、どこまでマイナーな物に対応できるのか確認してみることにした。 まずは古いものから。 OK Google、ブルーチアーのSummertime Blues をかけて。 すげぇ。 LAメタル系はどうか。 OK Google、ラットのWay Cool Jr. をかけて。 「Jr.」を「ジェイ・アール・ドット」と読み上げてきたが、ツェッペリンの「アイ」問題と同じであろう。 こうなったら日本の70年代物で試してみるしかない OK Google、頭脳警察の「銃を取れ」をかけて。 ライブ音源(笑。 OK Google、外道の「香り」をかけて。 またもライブ音源!!(笑笑。 コンテンツ的にはかなり使えることが判ったが、つくづく惜しむらくはやはり音質の悪さである。
おまけ
Google Homeに 1から100万まで数えるように指示するという、有名な実験の追試をやってみた。 この数年、夏になるとフジロックかサマーソニックのいずれかは必ず参加している。 10月のLoud Parkも二年連続で泊まり込んで観に行った。OzzfestやKnotfestなども都合がつけば出向くようにしている。 近年ロックフェスは若者の姿が少なく、中高年の祭典だと揶揄する向きもあるが、出かけてみると実際その通りなのでまあ仕方ない。 とは言え、20代の若者たちと比べれば明らかに体力は落ちているので、中高年は自分の年齢を自覚したうえで行動したいものである。 そこで主なフェスごとに、中高年向けのちょっとしたコツを披露しておく。 フジロック 20年の歴史を誇るフェスの草分け。野外に大きなステージがいくつも組まれ、その間の距離がかなりあるうえ、晴れ間のビーチパラソルも雨天の傘も禁止なので、体力がどこまで続くかが勝負になる。 また会場の苗場付近での宿泊地確保も困難を極める。 若いうちはテントや車での雑魚寝、あるいは大広間での相部屋も苦にはならないだろうが、中高年になるとそうもいかない。 昼間の環境が過酷なだけに、せめて夜くらいは温泉にでも浸かってのんびりしたいところだ。 そうなると残された方法は越後湯沢駅周辺に投宿して、朝晩シャトルバスで通うしかない。 ここで大きなポイントは、シャトルバスに乗る時刻である。 シャトルは朝7:00から運行しているので、乗車は早ければ早いほうがよい。 実は朝6:36に東京駅を発車する新幹線が、越後湯沢に8:06に到着するのだ(2017年10月時点)。 この時刻を過ぎたとたんに、シャトルバス乗り場は長蛇の列となる。 9時過ぎれば、乗車までに二時間待ちくらいを覚悟したほうがよい。 これでは何のために越後湯沢で宿泊しているのか訳が分からない。 そこで起床したらさっさとバスに乗って、会場が開くのを待ち、開場と同時に山の斜面などできるだけ日光を防げる位置を確保する。 このくらいの努力をしても罰は当たるまい。 サマーソニック 例年、フジロックの2週間後くらいに東京と大阪で同時に開催される大都市圏での最大のフェス。 東京の会場は幕張一帯であるため、東京近郊の在住であれば泊まり込まなくても通うことができる。 サマーソニックの場合、通常の一日券17,500円の倍近い価格である31,000円のプラチナチケットを購入すると様々な特典がついており、そのうちの一つが専用の観覧エリアである。 特に人気が高いミュージシャンのステージでは入場制限がかかるケースがあり、そういう場合にはプラチナが威力を発揮する。 例えば2017年度は、中田ヤスタカときゃりーぱみゅぱみゅで観客が溢れてしまい、途中から制限がかかって入場不可となった。 しかしプラチナには大きな落とし穴がある。 プラチナ専用で用意されているエリアは、ステージの両脇だけであり、正面から観ることができないのだ。 これは幕張メッセの会場でも、マリンスタジアムのアリーナでも同じ。 実際2015年にロバート・プラントが来た際、プラチナを購入して臨んだが、余りにも位置がしょぼいため、結局は通常のエリアへ入って観ることになった。 前述した2017年の中田ヤスタカのステージでも、その直前のバンドから潜り込んでおけば、この写真のように楽勝でかぶりつきにて観ることができている。 ほんの少しの努力をしてみるだけで、通常チケットでプラチナ専用エリアよりも全然悪くない位置で参戦できるのだから、はっきり言ってサマソニのプラチナはお勧めできない。 その費用の余裕があれば、近郊の駅周辺にホテルを取ったほうがましである。 Loud Park 毎年10月に大宮のさいたまスーパーアリーナで2日間に渡って開催される、文字通り爆音系のフェス。 古典的なハードロックからスラッシュメタルに至るまで幅広いサブ・ジャンルのバンドの演奏を一挙に観ることができる。 ステージは左右に Ultimate Stage と Big Rock Stage の二つが設けられ、間髪を空けず相互にライブが繰り広げられるのが特徴。 また客席はオールスタンディングのアリーナと、自由席と指定席から成るスタンドに分かれる。 スラッシュ系やデスメタル系ではアリーナで必ずサークルピットやダイブが発生するので、中高年には危険。 したがってスタンドの自由席でゆっくり座って観覧することを勧めたい。 スタンド自由席はステージ前方にも設けられているため、指定席よりもむしろ良席と言える。 しかしタイムテーブルによっては、Ultimate Stage と Big Rock Stage を移動する必要がある。 このため、いっそのこと、どちらかにどっしり固定してしまうのも良いだろう。 なおこの方法では2017年の初日の場合、アリス・クーパーとスレイヤーを流れで押さえることができたが、二日目はジーン・シモンズとマイケル・シェンカーのどちらかを選択する必要があった。
まあ贅沢は言うまい。 Photo by Artem Bryzgalov on Unsplash 未だに年間20回以上はライブを観に行っているので、良い席を確保する努力が生活の一部になってしまっている。 今から30年以上前、海外ロック・アーティスト招聘のほとんどはウドーが仕切っていたが、まだネットも携帯もなかったので、良席のチケットを取るのは力業だった。 新聞の朝刊でライブの告知広告をチェックするや否や青山のウドー事務所へ駆けつけて整理券を確保する。 そして後日、乃木坂の別の事務所で、整理券の順にチケットが発行される仕組みになっていた。 これがエスカレートして、予め朝刊のゲラ段階の情報を入手したうえで始発に乗ってウドーへ向かうようになり、これで常に前から三列目くらいのチケットをゲットしていた。 こうなると、もはやライブを観に行くことより、良席を取ることが目的化してしまった。 まったくアホなことである。 その後チケットの予約がネットに移行してからは、こうした馬鹿げた行為はできなくなってしまったが、その代わりに先行予約のための会員制度を活用することになった。 こうした会員制度は殆どが有償なので、果たして会費を払うだけの価値があるのか、実体験に基づいて検証してみたい。 ウドー 海外アーティスト招聘の草分けであるウドーは先行予約できる有償の会員制度として「ウドープレミアム・メンバーズ」を用意している。 年会費は4,800円となっており、決して安くはない。 しかし一般販売よりも座席の位置を優遇してくれるので、年に数回チケットを購入するのであれば、十分元は取れるのではないかと思う。 昔のように整理券のために始発で青山まで飛んでいくことを考えれば、これくらいの金額は仕方ないのだろう。 さて席の位置の件について今年の例で言えば、Anderson, Rabin & Wakemanはオーチャード・ホールで前から四列目、Mr. Bigは武道館のアリーナど真ん中であった。 なかなか最前列という訳にはいかないが、このくらいの位置感で見られるのなら上々である。 クリエイティブマン Summer SonicやLoud Parkのような大規模なフェスに加え、マイケル・モンローやポール・ウェラーなど渋いところまで幅広く招聘しているクリエイティブマンの先行予約制度は「3A Members」と名付けられており、こちらも年会費5,000円となかなかの金額である。 3Aでは、ウドー同様にチケットの先行予約ができるほか、フェスのグッズが貰えたり、無償でライブのモニター招待があるなど、お徳感満載だ。 モニター招待は月に数回案内があるので、知らないバンドを観に行くためには絶好のチャンスである。 私自身、守備範囲外のソウル系アーティストやサマソニで来日した新人バンドなどに招待してもらった。 ちなみにモニターに応募して外れたことはまだないので、これだけで十分に年会費の元を取っている。 Blue Note Tokyo 基本的にジャズの店であるが、最近はなぜかレジデンツやジョン・ケイルなど捻くったところを呼んでくれるので、時々寄らせていただいている。 先行予約は「JAM SESSION」という制度を設けており、入会金1,000円、年会費3,500円となっている。 「JAM SESSION」で何回か予約をかけたが、すべてアリーナの四列目内であった。 ジョン・ケイルのライブで演奏前にステージを撮影したのがこちら。 ドラムの生音がそのまま聞こえるような席である。 キャンディ・ダルファーやブレッカー・ブラザースなど人気の高いミュージシャンでも、ほぼ同じような良席を確保することができた。 ビルボードライブ東京 ビルボードの先行予約制度は「Club BBL」となっており、初期手数料1,080円と年会費3,240円が必要になる。 ビルボードの場合、会員専用の席が用意されており、図のピンクのエリアで観ることができる。 最前列から二列は自由席になっているが、会員でも最前列で観るためには、敢えて自由席で予約して当日の開場時間に入ればよい。
このようにすべてをネットだけで完結するのではなく、若干でも努力を擁する要素を残しているところは好感が持てる。 なお、岸谷香クラスの人気アーティストになると会員予約だけで埋まってしまい、一般販売ではアウトになってしまうケースがあるので、ここも確実に席を押さえたければ会員になっておくのがよかろう。 なお、ぴあやe+も会員にはなっているが、実際のところ殆ど使ったことがない。
Art work from "The Satanic Majesties Request"
5月に発売となったビートルズのサージェント・ペパーズ 50周年エディションに続き、ローリング・ストーンズのサタニック・マジェスティーズも50周年となり、記念盤が発売になった。
ジャケットは四つ折りになっており、CDはステレオ・ミックスとモノラルの二枚。
更にライナーノートと併せ、日本盤のシングル「ランターン」と「シーズ・ア・レインボー」のジャケットが同梱されている。
CDもシングル・ジャケットに合わせた梱包で、芸が細かい。
肝心の音のほうについては、旧盤と比べ音圧が全体に大きくなっており、また様々な細かい楽器がくっきり浮き上がる仕上げになっている。
しかし、音の定位には変化がないように聴こえ、ドラムも一塊になっているので、サージェント・ペパーズのように各楽器ごとに分離できるようなマスターテープは無かったということなのだろう。 ところで、予約注文をアマゾンとユニヴァーサルの両方に入れてしまっており、同時に到着した。間抜けな話である。 Photo by Jack Hamilton on Unsplash この数年、ロック・ミュージシャンの訃報が相次いでいる。 考えてみれば、リスナーである私のほうも50代後半に差し掛かっているのだから、ミュージシャン側はさらに高齢化しているのも当たり前と言えば当たり前である。 しかし中にはプリンスやジョージ・マイケルのように若くして亡くなる人達もおり、70才を超えられない「70の壁」があるような気がしたので、2015年から2017年7月にかけて亡くなったミュージシャンを死亡時の年齢で並べてみた。 ロック・ミュージシャンの死亡時の年齢 網掛けは癌が死因だった方(Wikipediaを参照) 世界保健機関のデータでは、2013年時点でのイギリス男性の平均寿命は79才、アメリカ男性の場合は76才となっている。
90才近くまでライブを続けていたチャック・ベリーやB.B.キングは別格として、やはり「70の壁」を超えずに亡くなった人が多い。 残念でならない。 特に癌で亡くなった人たちを網掛けしてみたところ、60代に集中していることが見えてきた。 私自身は医学の知見が無いので無責任な発言はできないが、ロン・ウッドは今年5月に検診で発見された肺癌を手術で克服しツアーに復帰、チャーリー・ワッツも2004年の咽喉癌発覚後の治療により76才になる現在まで現役であることを考えると、亡くなった人たちの中にも早期発見と適切な治療で救える命があったのではないだろうか。 モーターヘッドのレミーは、癌が発見された時には既に全身に転移し、もはや手の施しようが無かった状態だったとのことである。 一方、ロン・ウッドの場合、ツアー開始前に必ず受診する検診で初期の癌が発見され克服することができた。 別にミュージシャンでなくても、中高年になったら検診から逃げ回らず、定期的に受けておきたいものだ。 それにしても、2015年夏のフジロックでモーターヘッドを観てから、半年も経たない年末にレミーは逝ってしまった。 クリス・スクワイアはイエスで最後の来日後、アラン・ホールズワースもビルボードでの久しぶりのライブからさほど時間をおかないでの訃報である。 もう来日したミュージシャンのライブは予算と時間が許す限り、片っ端から観ておくしかないのかもしれない。 自然の摂理とは言え、寂しいものだ。 今回のブログは落ちも結論もない。合掌。
Photo by Flemming Fuchs on Unsplash
この数年、プログレ系の集まりで知り合った人たちの中で、周辺諸国に対する根拠なき蔑視を口にしたり、ファシズムを公然と肯定する連中がいて閉口したことがある。 その都度たしなめはするのだが、中には頑迷な排外主義を意地でも変えようとしない人物もいた。 こういった人たちとの付き合いに時間を費やすほどこちらも暇ではないので、同じ趣味を持つ間柄と言えどもSNSでのつながりを含め一切の関係を断つことにしている。 プログレの様式美がファシズムと相性がいいのではと仮説を立ててみたが、プログレ・マニアの多くが排外的なわけではないので、音楽的な好みとの有意性はないと信じたい。 またミュージシャンの側はむしろ積極的に反レイシズム、反ファシズムの立場を表明しているのが事実である。 ここでは、そのいくつかのサンプルを見てみたい。
ピーター・ガブリエル
ジェネシスのヴォーカルだったピーター・ガブリエルは、三枚目のソロ・アルバム「III」に”Biko”という曲を収めている。 これは南アフリカの反アパルトヘイト活動家で、1977年に30才の若さで獄死したスティーヴン・ビコ氏に捧げられたものである。 ピーターは、ライブでのMCで「非暴力でレイシズムに立ち向かい、南アフリカの刑務所に収監、拷問で殺された勇敢な男、スティーヴン・ビコ」と紹介している。
ゲディ・リー
カナダの人気トリオ、ラッシュのベーシストであるゲディ・リーの両親はユダヤ系ポーランド人で、ナチスのダッハウ強制収容所とベルゲン・ベルゼン強制収容所からの生還者である。 その後二人はカナダに移住し、1953年にゲディが生まれた。 ゲディは、幼少時に母親からホロコーストの話を聞き、悪夢を見て眠れなかったことがあると話している。 また両親のホロコーストの体験に基づいて ”Red Sector A” という曲を書いた。
ブライアン・イーノ
ロキシー・ミュージック出身のブライアン・イーノは、デヴィッド・バーンやロジャー・ウォータースらと共に、パレスチナ問題にコミットしているミュージシャンの一人である。 2014年7月、イーノはデヴィッド・バーンへの書簡という形で、イスラエル軍によるガザ侵攻を強く非難した。(なお書簡全文を翻訳したので、こちらを参照いただきたい。) また2017年7月には、難民救済のNGO “MOAS” を支援するため、コールドプレイとシングル “A L I E N S” を共作、プロデュースし、アニメとして発表している。
ロジャー・ウォータース
ロジャーは、イーノのパレスチナ問題に関する書簡に対して、自身のFacebookで強い賛同の意を表明した。 この中で「沈黙と無関心は最大の罪」(To stand by silent and indifferent is the greatest sin of all.)と明言している。 また最近のライブでは、ピンク・フロイド時代の曲 “Pig” の演奏で米大統領トランプのイメージを使い、「豚野郎」と断じている。
トッド・ラングレン
トッドもまた、反トランプの意志を明確に表明している一人である。 2017年5月には、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとの共作で、反トランプの楽曲 “Man in the Tin Foil Hat” を制作し、徹底的にトランプをこき下ろしている。 この曲の動画で登場する「ビル・オランウータン」(Bill O’Rangutan)とは、トランプの御用メディアとして知られるFox NewsのBill O’Reilly を揶揄したものであるのは明白だ。
レイシストやファシストがジェネシス、ラッシュ、ロキシー・ミュージック、ピンク・フロイド、トッド・ラングレンを聴くのは、彼らに対する冒涜であり、また人類に対する冒涜である。
スティーリー・ダンも禁止。彼らの音楽を聴きたいのであれば、まずレイシストやファシストであることを止めるべし。 Nishi Shinjuku,Tokyo - Bootleg, HeavenPhoto by Josh Wilburne on Unsplash 3月に「ブートレグ流通の変遷」というタイトルでブート流通について書いたが、過去のブートの扱いは今ほど堂々とはしていなかったはずだとの記憶が、もやもやと燻り続けていた。 そこで手元に残っている古雑誌で、いくつか確認してみることにした。 これは、1984年のFool’s Mateでの広告。この雑誌はいつの間にかビジュアル系専門誌になってしまったが、当時はプログレやポスト・パンクが中心だった。 メジャーレーベルの広告は表紙裏くらいで、あとはほとんどの広告がブート屋である。 その中でブートに対して「プライベート盤」という表現が使われていた。 次に同じ1984年のDOLL。 こちらはパンクに焦点を当てた月刊誌で、広告は自主制作盤が中心。なかには手書きのものまである。 ここで見つけたのは「プライベート・ビデオ」なるブートの広告。 「プライベート盤」の派生語みたいなものだろう。 更に12年経過した1996年のrockin’ on。今でこそメジャーな音楽誌になっているが、当時の広告はグラビアのカラーページを除けば、他は全部ブート屋といってもいい状態だった。 もう1996年ともなれば媒体は完全にCDへ置き換わっているため、ここでは「コレクターズCD」という言葉が使われている。 「プライベート盤」といい「コレクターズCD」といい、後ろめたさが醸し出されていて趣き深い。 やはり今ほど開き直った商売ではなかった。 さて、ここから本題。これまでブートのような著作権侵害は親告罪だったので、権利者が訴えなければ摘発されることはなかった。
ところが著作権侵害は、この度成立した共謀罪(いわゆるテロ等準備罪)に含まれているので状況が一変した。 ブート制作・販売は明らかに不法行為である。 とは言え、さすがにどう見てもテロ行為の準備とは思えない。 しかし二人以上の集団が準備行為を行えば、それだけで共謀罪の構成要件を十分満たすのである。 しかも共謀罪は親告罪とは到底考えにくいので、捜査当局がその気になればいつでも摘発できる。 では共謀罪の対象となりえるのはブート屋だけなのだろうか。 共謀罪における「組織的犯罪集団」の定義は結局曖昧なままで可決されてしまった。 ブート屋はもとより、音楽ファンが二人以上で無断録音や撮影の計画を相談すれば、たとえ実際に録音や撮影を行わくてもそれだけで法的には共謀罪として摘発可能になっているのである。 実際のところ、共謀罪の運用は暴対法に近いような形で、ある程度国民世論に受け入れられるようなところから開始されるだろう。 しかし共謀罪は、到底テロとは無縁な様々な分野で、いつでも権力者が恣意的に運用できる。 そしてこのような法の成立を許してしまったのは、他でもない自民党に投票した有権者自身である。 実はブート屋の間抜けぶりを笑っている場合ではない。 ライブ会場で写真を撮ってSNSにアップしたいなら、そのたびに自分の投票行動をよく思い返しておくべきである。 ビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の50周年記念エディションが到着した。 予約していたアマゾンからの発送だが、いつにも増して厳重な梱包。段ボールで二重になっている。それにしてもでかいし重い。 1987年の20周年記念エディションと比べてみる。CDがアナログを凌駕し始めた1987年には、歌詞通り '20 years ago today' がプロモーションの合言葉に使われたのを今でもはっきり覚えているが、そこからさらに30年もの年月が経過した事実にも改めて驚愕。 さて開梱してみると、まずはマスターテープのケースを捩った仕様。 さらに中味は、重量級ブックレット(重い原因はこれだった)、ポスター数点、そしてアナログ盤当時のサイズで制作されたジャケット。当然裏面には歌詞が掲載されている。涙。 ジャケットを開くと、CD 4枚にBlu-RayとDVD。どこから手を付けるべきか悩んでしまうが、そりゃまずオリジナル音源にリミックスを施した一枚目からでしょう。 このリミックス、とにかく凄い。 40年以上聴き続けてきたオリジナル盤の問題点をすべて解決し、完全に21世紀仕様として蘇らせている。 オリジナル盤では、楽器やボーカルを完全に左右へ振り分けた疑似ステレオだった。 例えば一曲目のタイトル曲ではポールのリードボーカルを右へ寄せ切っていたし、リンゴのドラムも塊となって片チャンネルにまとめられていた。 新しいリミックスでは、定位が完璧に修正されている。 まずタイトル曲のポールのリードボーカルが完全にセンターに移動されていることに気づく。 リンゴのドラムも、タムやハイハットなどが分離され、定位し直されている。 オリジナルの録音では8チャンネルしかないためドラムは塊になっていたはずだが、どうやって分離したのだろう。 現在のデジタル技術の粋なのだろうが驚くしかない。 リンゴのドラムの改善が特に顕著なのは2曲目の 'With A Little Help From My Friends' で、スネアがセンター、ハイハットがやや左側に寄せられており、ドラムがクリアに分離されたため今まで聞こえにくかったコーラスでのタンバリンまではっきり聞き取れるようになった。 なお 'A Day In Life' では、ピアノなどが左側でリズムを刻んでいるため、敢えてドラムは右側へ寄せたままになっている。 'Lucy In The Sky' のイントロではハープシコードがパンポットで微妙に左右に動くことで全体に広がりを持たせているし、アルバム全体を通じてコーラスの広がりも圧倒的。 またポールのベースの音質の改善も顕著で、輪郭がはっきりしたうえに、重い音になっている。 2枚目以降のアウトテイク集にまで辿り着くにはまだしばらく掛かりそうだが、これはとにかく「買い」である。 追記 (21:00 28/5/2017)
NPRでのジャイルス・マーティン(ジョージ・マーティンの息子)のインタビューによると、オリジナル制作当時は4トラックを重ね続けて音を作っていったので、今回の50周年記念エディションにあたっては最初のテイクを含むテープに遡って音源としたとのこと。 それらはヒスノイズもなく極めてクリアな音だったとも証言している。 音質改善はデジタル技術に頼ったわけではなく、全て原音の良さにあった。 ますます恐るべしである。 Photo by Caleb Woods on Unsplash あまり褒められた話題ではないが、誰も書かないと思うので敢えて書く。 ブートレグの流通の歴史。 いわゆる海賊版である。 著作権など権利者の権利を一切無視して製造・流通される非合法な商品。 古くからのロック・ファンの間では「ブート」と呼ばれることも多い。 PCの違法コピーとは異なり、ブートレグのコンテンツは正規盤を不法コピーしたものより、ライブ会場で勝手に録音したもの、あるいは正規盤に収録されなかったアウトテイクを集めたものが殆どである。 アーティスト側からすれば権利から本来得られるべき収益が横取りされるだけではない。 ライブでの演奏ミスが修正されないまま拡散されるし、アウトテイクも作品として世に出すには十分なクオリティではないと判断したものである。 堪ったものではない。 しかし少しでもレアな音源に触れたいというファンの心理を突いたものではあるため、闇商品として現在も存在し続けている。 70年代はアナログの時代だったので、ブートレグもLPの形態を取っていた。 正規盤のように凝ったデザインを施したジャケットのものもあれば、白いボール紙にモノクロのチラシのような印刷物を貼り付けただけのものもあった。 ジャケットと音質は必ずしもシンクロしておらず、ジャケットは凝っているのに最悪の音質だったり、ボール紙のジャケットでも「ブートの名盤」と呼ばれるようなものもあった。 また当時、東京のブートレグ専門店は西新宿に集中していた。しかし多摩地区でも主要な駅周辺には数店舗存在していたので、恐らく全国的にブートレグ取り扱い店があったのだろう。 そんな統計は残っていないだろうが。 80年代にはいりアナログLPがCDに駆逐されると、ブートもまたCDに替わっていった。 アナログ時代に知られていたLed Zeppelinの ‘Blueberry Hill’、Jimi Hendrixの ’Paper Airplanes’ や ‘Diamonds in the Dust’ などが正規盤並みの装丁で流通し始めたのもこの頃である。 ブートレグ専門店もCD取り扱いへ変わっていった。 90年代には、プリンスの未発表音源 ‘Black Album’ がまるごとブートレグで流通するという事件が発生した。 ミックスダウン作業も完了した所謂「完パケ」状態であったため、音質は完璧だった。 その後プリンスは、このブートレグ対策のために ‘Black Album’ を正規盤としてリリースすることになる。 正規盤はただ真っ黒なジャケットなのに、ブートレグのほうがきちんとデザインされているのは、いやはや何ともである。 90年代半ばになるとインターネットの普及に合わせて、世界規模でのブートレグの闇流通網が構築されていった。 従来のブートレグ流通が「ビジネス」であったのに対し、こちらはマニアの間での音源交換である。 インターネットの普及といっても、まだSNSが開発される以前のことなので、主要な連絡手段はメーリングリストだった。 例えば、Jimi Hendrixに関するメーリングリストは、アメリカとユーゴスラビアに在住する人物たちによって運営されていた。 メンバーの中でブート音源が発掘されると入手希望者を募り、カセットテープで配布される仕組みである。 しかしながらカセットの孫コピー、曾孫コピーなので、とてもまともに聴けるような音質の代物ではない。 なおこのグループは、ユーゴスラビア内戦勃発後、NATOによるベオグラード空爆を契機にして、音楽とはまったく別の次元の諍いで空中分解し、消滅してしまった。 ところで、アーティスト側もブートレグに対し、決して静観していたわけではない。
Frank Zappaは、よく知られたブートレグの装丁や音源をそのままコピーしたものを「ビート・ザ・ブート」シリーズという正規盤にしてしまった。 先のJimi Hendrixについても、遺族が立ち上げた会社 Experience Hendrix が、「正式ブート」シリーズとしてライブ音源をいくつも販売開始している。 ライブ会場で音源のCDの予約を受け付け、後日販売するという手段も考案された。 Peter Gabrielは2014年のヨーロッパ・ツアー全16か所でこれを実施しており、すべての公演を収録した16枚ボックス・セットまでリリースした。 先日来日しビルボードで公演したStick Menも、来場者限定で当日のライブCDの予約受付をしている。 さてここまで書いてきたブートレグは恐らく海外で製造され輸入したものと思われるが、最近はどうやら日本公演専門のブート業者がいるらしい。 宣伝コピーにある「この1日を完全再現」とか「サウンドボード・レベルのクオリティ」なんていう煽り文句は昔からあるものなので、まあそんなもんだろうとは思う。 しかし「イヤーモニター・ソースによるライン音源」って、これワイヤレス・モニター用の電波を勝手に受信・録音したってことでしょう。 いくら何でも、さすがにこれはやり過ぎではないか。 |









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