久保田直己 不撤不散
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ブートレグ流通の変遷

26/3/2017

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Photo by Caleb Woods on Unsplash

あまり褒められた話題ではないが、誰も書かないと思うので敢えて書く。
ブートレグの流通の歴史。
いわゆる海賊版である。
著作権など権利者の権利を一切無視して製造・流通される非合法な商品。
古くからのロック・ファンの間では「ブート」と呼ばれることも多い。
 
PCの違法コピーとは異なり、ブートレグのコンテンツは正規盤を不法コピーしたものより、ライブ会場で勝手に録音したもの、あるいは正規盤に収録されなかったアウトテイクを集めたものが殆どである。
アーティスト側からすれば権利から本来得られるべき収益が横取りされるだけではない。
ライブでの演奏ミスが修正されないまま拡散されるし、アウトテイクも作品として世に出すには十分なクオリティではないと判断したものである。
堪ったものではない。
しかし少しでもレアな音源に触れたいというファンの心理を突いたものではあるため、闇商品として現在も存在し続けている。
 
70年代はアナログの時代だったので、ブートレグもLPの形態を取っていた。
正規盤のように凝ったデザインを施したジャケットのものもあれば、白いボール紙にモノクロのチラシのような印刷物を貼り付けただけのものもあった。
ジャケットと音質は必ずしもシンクロしておらず、ジャケットは凝っているのに最悪の音質だったり、ボール紙のジャケットでも「ブートの名盤」と呼ばれるようなものもあった。
また当時、東京のブートレグ専門店は西新宿に集中していた。しかし多摩地区でも主要な駅周辺には数店舗存在していたので、恐らく全国的にブートレグ取り扱い店があったのだろう。
そんな統計は残っていないだろうが。
 
80年代にはいりアナログLPがCDに駆逐されると、ブートもまたCDに替わっていった。
アナログ時代に知られていたLed Zeppelinの ‘Blueberry Hill’、Jimi Hendrixの ’Paper Airplanes’ や ‘Diamonds in the Dust’ などが正規盤並みの装丁で流通し始めたのもこの頃である。
ブートレグ専門店もCD取り扱いへ変わっていった。

90年代には、プリンスの未発表音源 ‘Black Album’ がまるごとブートレグで流通するという事件が発生した。
ミックスダウン作業も完了した所謂「完パケ」状態であったため、音質は完璧だった。
その後プリンスは、このブートレグ対策のために ‘Black Album’ を正規盤としてリリースすることになる。
正規盤はただ真っ黒なジャケットなのに、ブートレグのほうがきちんとデザインされているのは、いやはや何ともである。
 
90年代半ばになるとインターネットの普及に合わせて、世界規模でのブートレグの闇流通網が構築されていった。
従来のブートレグ流通が「ビジネス」であったのに対し、こちらはマニアの間での音源交換である。
インターネットの普及といっても、まだSNSが開発される以前のことなので、主要な連絡手段はメーリングリストだった。
例えば、Jimi Hendrixに関するメーリングリストは、アメリカとユーゴスラビアに在住する人物たちによって運営されていた。
メンバーの中でブート音源が発掘されると入手希望者を募り、カセットテープで配布される仕組みである。
しかしながらカセットの孫コピー、曾孫コピーなので、とてもまともに聴けるような音質の代物ではない。
なおこのグループは、ユーゴスラビア内戦勃発後、NATOによるベオグラード空爆を契機にして、音楽とはまったく別の次元の諍いで空中分解し、消滅してしまった。
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ところで、アーティスト側もブートレグに対し、決して静観していたわけではない。
Frank Zappaは、よく知られたブートレグの装丁や音源をそのままコピーしたものを「ビート・ザ・ブート」シリーズという正規盤にしてしまった。
先のJimi Hendrixについても、遺族が立ち上げた会社 Experience Hendrix が、「正式ブート」シリーズとしてライブ音源をいくつも販売開始している。
ライブ会場で音源のCDの予約を受け付け、後日販売するという手段も考案された。
Peter Gabrielは2014年のヨーロッパ・ツアー全16か所でこれを実施しており、すべての公演を収録した16枚ボックス・セットまでリリースした。
先日来日しビルボードで公演したStick Menも、来場者限定で当日のライブCDの予約受付をしている。
 
さてここまで書いてきたブートレグは恐らく海外で製造され輸入したものと思われるが、最近はどうやら日本公演専門のブート業者がいるらしい。
宣伝コピーにある「この1日を完全再現」とか「サウンドボード・レベルのクオリティ」なんていう煽り文句は昔からあるものなので、まあそんなもんだろうとは思う。
しかし「イヤーモニター・ソースによるライン音源」って、これワイヤレス・モニター用の電波を勝手に受信・録音したってことでしょう。
いくら何でも、さすがにこれはやり過ぎではないか。
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