Immediateレーベルの "Blues Anytime" シリーズは私もアナログで愛聴し、その後CDで買いなおした経験があるので、同情申し上げるしかない。 ちなみにこのCDは、ジミー・ペイジやエリック・クラプトンらが60年代に自宅録音に近い形で残したブルースのセッション集で、今となっては非常に貴重な音源である。
CDは1982年に商用化された後、音楽用途で急速に普及が進み、早くも1986年には販売数がアナログを超えるに至った。
80年代当時から、CDの物理的な寿命は25~30年くらいではないかと言われていたことを記憶している。 そして今年は、初期に販売されたCDの30年目を過ぎた頃だ。 私自身が購入したアナログ盤として一番最後となったのは Gun's N Roses の "Appetite For Destruction" で、その直後にCDで買いなおしている。
まずこれをチェックしたところ、今の時点では無事だった。
また、1988年にリリースされた Living Colour の "Vivid" 以降は、CDのみの購入になっている。
こちらも無事。
そして90年前後から、アナログ盤で所有していた音源をCDで買いなおすという行為に走ったのであった。 このうちの何枚かをチェックしたところ、Led Zeppelin の "II" で剥離が始まっているのを発見。 ラベル面、データ面共に、端から虫食い状に穴が開いている。
この状態ではまだ再生が可能だった。
なお Led Zeppelin であればいくらでも買いなおしが効くので、被害としてもまだましな方である。 問題はCDが廃盤になっていたりブートだったりと、もはや買いなおしが効かない場合だ。 例えば、Wet Willie の "Left Coast Live"。
この盤は高校生だった70年代に愛聴していたレコードの一枚だが、CDは1989年に発売された際に買いそびれてしまっていた。
その後再発されることがなく、ヤフオクなどでの出品も見当たらないため、中々入手することができなかったが、数年前にスウェーデンの中古盤サイトでたまたま発見して購入できた。 こういう類のものは剥離で崩壊されてしまうと本当に困るが、取り合えずこの一枚は無事だった。 さて、CD単品をある程度ピックアップしてチェックした後は、ボックスセットの状態を確認することにした。 数あるボックスセットの中でも、個人的に最も貴重なのは Derek and the Dominos の Layla 20周年記念盤である。 これは1990年に販売されたものなので、既に29年が経過している。
予想もしていなかった事態だが、ボックス内のスポンジが経年劣化し、粉状になって崩れ落ちていた。
不幸中の幸いでCD自体は問題なく、また崩れたスポンジが融着するような状態にもなっていなかった。 セットのCD一枚目は現在も通常の販路で容易に購入することができるものだが、二枚目と三枚目はアウトテイクやセッション音源なので、腐食は本当に困る。 (余談だが、できれば2020年になったら、50周年記念盤として再発してほしい。)
湿気や直射日光を避けることがCDを剥離から防ぐ予防策になるようだが、いずれにせよ物理的な媒体である以上、CDの経年劣化は避けられない。
最も確実な対策は、バックアップを取っておくことであろう。 ただし著作権法第30条に違反しないように、あくまでも個人使用のためと気を付けなければならない。 さらに数百枚、数千枚のCDのバックアップ作業は現実的でないので、メジャー・タイトルは買いなおせると割り切って、貴重盤に絞るしかない。 もはやこうなってくると、情報システムのバックアップとあまり変わらない気がしてくるが、仕方ない。
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1969年から50年が経過した。 1969年は、アポロ11号による人類初の月面有人着陸で歴史に刻まれた年である。 一方この頃、ベトナム戦争は解決の目途がないまま泥沼化していった。アメリカでリチャード・ニクソンが大統領に就任し、また南ベトナムでは解放戦線側が全土解放を目指して臨時革命政府を樹立する。 日本では、年を越した大学紛争が東大安田講堂攻防で頂点を迎え、さらに秋には国際反戦デーや佐藤首相訪米阻止闘争で全国各地が騒乱状態となった。 また1969年は、映画「男はつらいよ」が初めて製作され、テレビで「コント55号の裏番組をブッ飛ばせ!」「8時だョ!全員集合」「サザエさん」の放送が開始された。 社会的にも文化的にも、来るべき1970年代が予感される年であった。 ロックにおいてもまた、1969年は大きな転換期であった。 1960年代最後のエポックとして、初の大規模なフェスであるウッドストックが開催された。 しかしビートルズは事実上の解散状態になってしまい、ローリング・ストーンズはブライアン・ジョーンズを失ってしまう。 こうした1960年代の終焉と裏腹に、レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾン、イエス、EL&Pなど、1970年代に活躍するバンドが次々と登場していった。
1/2 ビートルズ、レット・イット・ビーのプロジェクト開始
1/13 キング・クリムゾンがロンドンでリハーサル開始 1/17 「レッド・ツェッペリン」リリース 1/18 - 19 東大安田講堂攻防戦、600名以上逮捕 1/20 リチャード・ニクソンが米大統領就任 1/30 ビートルズがアップル・ビル屋上でライブ演奏 2/8 ブラインド・フェイス結成 2/24 ジミ・ヘンドリックス最後の英国公演 3/1 ジム・モリスンが公然猥褻罪で逮捕 3/2 中ソ国境紛争(ダマンスキー島事件) 3/12 ポール・マッカートニーとリンダ結婚 3/20 ジョンとヨーコ結婚 3/22 ジョンとヨーコ「ベッド・イン・ピース」開始 3/30 フランシーヌ・ルコント、パリで焼身自殺 4/7 永山則夫、連続射殺事件容疑で逮捕 4/9 キング・クリムゾン、スピークイージーでライブ・デビュー 4/21 ジャニス・ジョプリン、ロイヤル・アルバートでコズミック・ブルースとステージ・デビュー 4/26 ハンブル・パイ結成 4/27 「コント55号の裏番組をブッ飛ばせ!」放送開始 5/13 ビートルズ、赤盤・青盤のジャケット撮影 6/7 ブラインド・フェイス、ハイドパークでデビュー 6/8 南ベトナム解放民族戦線が臨時革命政府樹立 6/9 ミック・テイラーがローリング・ストーンズに加入 6/28 CSN&Yデビュー 7/3 ブライアン・ジョーンズ死亡 7/20 アポロ11号、人類初の月面有人着陸 7/25 イエス、デビュー 8/14 北アイルランド宗教紛争にイギリス軍介入 8/15 - 17 ウッドストック・フェスティバル 8/27 「男はつらいよ」公開 9/13 ジョン・レノンらトロントでロックンロール・リバイバル・ショー出演 9/15 ディープ・パープルがロイヤル・フィルと共演ライブ 10/1 ビートルズ「アビーロード」リリース 10/4 「8時だョ!全員集合」放送開始 10/5 「サザエさん」放送開始 10/12 「クリムゾン・キングの宮殿」リリース 10/17 レッド・ツェッペリン、三回目の全米ツアー開始 10/21 国際反戦デーで1594人逮捕 11/5 赤軍派53人逮捕 11/11 ジム・モリソン、機内泥酔で逮捕 11/15 ジャニス・ジョプリン、ライブで卑猥発言をしたとして逮捕 11/16 佐藤首相訪米阻止闘争で2,500人逮捕 12/6 オルタモントの悲劇 12/16 ジョン・レノンが世界12か国で「ウォー・イズ・オーヴァー」の看板広告、EL&P結成 12/27 「レッド・ツェッペリンII」全米一位七週
何はともあれ、2019年は50周年記念盤商法に思い切り付き合わざるを得ない年になりそうである。
Photo by David Menidrey on Unsplash ちょうど一年前「2017年 ライブ三昧を振り返る」と題した記事を書いたが、2018年もジャンルを問わず、片っ端からライブを観に行くことになってしまった。 いきなり縁起のいい話ではないが、近年はレミーやクリス・スクワイヤなどライブを観た直後に亡くなってしまうミュージシャンも出始めている。 往年のミュージシャンの場合、「もうこれが最後かもしれないな」と考えると、財布が許す限りライブを観に行かざるを得ない。 あまり不吉なことを言いたくはないけれど、こんなことをやっていられるのも、多分あと5年くらいであろう。 何しろ今年元気に来日してくれたポール・マッカートニーだって、もう76才なのである。 ポール・スタンレー ビルボード東京 1/13(土) 2017年のジーン・シモンズに続いて、2018年はポール・スタンレーとエース・フレーリーがそれぞれソロで来日した。 ポール・スタンレーは自身のバンド「ソウル・ステーション」を率いての来日で、キッスの曲は一切演奏せず、モータウンを中心にしたソウル・ナンバーを披露。 彼のボーカルの線の細さが気になるところではあったが、たいへん楽しいライブであった。 なお2019年にはキッスとしての大規模なワールド・ツアーが予定されている。 ポール・ウェラー 横浜 Bay Hall 1/20(土) オールスタンディングの会場にふさわしく、ジャムやスタイル・カウンシル時代の曲も含めたノリのよいステージを観せてくれた。 還暦直前ですっかり白髪になってしまったが、額の血管がぶち切れそうになりながら歌う姿は若い頃から何も変わっていない。 アーチ・エネミー 六本木 EX THEATER 2/20(火) 頻繁に来日してくれるアーチ・エネミーだが、2018年の来日は通算18回目となった。 ボーカルがアンジェラ・ゴゾウからカナダ人のアリッサ・ホワイトグラズに替わってからでも4回目である。 アリッサはデス・ボイスからクリーンなシャウトまで多彩な歌い方ができる人であった。 スティーヴ・ハケット 川崎 Club Citta 4/7(土) スティーヴ・ハケットもこのところ頻繁に来日してくれる。 前回はすべてジェネシスの楽曲だったが、今回は前半がソロ・アルバムからのセットで、後半がジェネシスというマニア向けの構成。 それにしても "The Musical Box" や "Supper's Ready" を全編通して演奏するとは思わなかった。 ギズモドローム 渋谷 オーチャード・ホール 4/9(火) スチュワート・コープランドやエイドリアン・ブリューらによるスーパー・バンド。 特にスチュワートが大活躍で、ドラムのみならずギターも弾きまくり、実に半分近くの曲でギターを手にしていた。 発売されたばかりのアルバムはもちろんのこと、ポリスやキング・クリムゾンの曲も演奏する大サービスであった。 キャメル 川崎 Club Citta 5/19(土) 18年ぶりの来日で、名盤「ムーンマッドネス」完全再現を売り文句にしたライブ。 長期療養から復帰したアンディ・ラティマーの体調が心配されるところだったが、2時間以上にわたるステージを連日こなした。これぞプログレ。 PUFFY ビルボード東京 7/18(水) 長年聴いていたのに、なかなかライブを観る機会に恵まれず、実は初めてのPUFFY。 デビューから20年以上経ち、当然ながら彼女たちもすっかり大人になったが、肩の力を抜いたいいライブだった。 掛け合い漫才のようなMCも最高。 ソフト・マシン ビルボード東京 7/28(土) 結論からはっきり言ってしまうと、2018年のワースト・ライブだった。 全盛期からのメンバーであるロイ・バビントンは指が全然動かず、ベースでリフがまともに弾けない。 ギターのジョン・エサリッジもやたら速弾きをするものの、"Hazard Profile" ではアラン・ホールズワースのパートを弾かず、ゲストのゲイリー・ハズバンドにキーボードで代役させる始末。 さすがにこれには客席から失笑がもれていた。 ドラムのジョン・マーシャルは高齢で背中が曲がり、もはや歩くのもやっとという状態だったので、たぶんこれが最後の来日になるかもしれないが、再度来日してももう観に行かないと思う。 ソニックマニア 幕張メッセ 8/17(金) この数年、夏はフジロックかサマーソニックのどちらかに必ず足を運ぶようにしている。 どちらを選ぶかの判断基準は極めて単純で、爆音が楽しめるかどうかだけである。 そんなわけで2018年の夏は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン 目当てでソニックマニアの一択になってしまった。 ラウドパークでさえ爆音とは感じられない耳になってしまっているが、さすがにマイブラは凄まじかった。 いや、爆音どころか轟音。深夜の徹夜状態の体にはきつすぎて、吐き気を催すほどの音量だった。 なお後日、ジョーズ・ガレージでこの日のブートを買ってしまったのは内緒である。 ソンズ・オブ・アポロ 恵比寿 Liquidroom 9/12(水) ビリー・シーン、マイク・ポートノイらによる超絶技巧のハードロック・スーパーバンド。 ギターもベースもダブルネックで押し通し、奏法だけでなく体力まで超絶だった。 これでビリー・シーンは還暦である。恐るべし。 また、マイク・ポートノイが終始笑顔であったのも印象的だった。 リアム・ギャラガー 武道館 9/13(木) ノエルのサマーソニックでのライブから一か月後にリアムが来日。 いつまで兄弟喧嘩を続けているのか知らないが、まあいい。 二時間以上のライブが多い中で、あっさりと80分くらいで終了してしまった。 まあいい。 ジョー・ペリー 品川プリンス ステラボール 9/18(火) 2017年のスティーヴン・タイラーのソロ来日に続いて、ジョーもソロで来日。 ボーカルにエクストリームのゲイリー・シェローンを迎え、さらにスペシャル・ゲストはエアロスミスでの同僚のブラッド・ウィットフォード。 最新のソロ・アルバム "Manifesto" からの楽曲に加え、 "Toys in the Attic" や "Sweet Emotion" などエアロスミスの曲もふんだんに演奏してくれた。 ジョーの演奏自体はかなり雑であったが、それも含めてのジョーなので文句は言うまい。 デイブ・スチュワート&バーバラ・ガスキン 青山 月見ル君想フ 10/21(日) ハットフィールズ & ザ・ノースなどでの活躍で知られるカンタベリーの大御所。 小さな会場で、デイブの足元の席を確保することができた。まさにかぶりつきである。 デイブとバーバラのほかに若手のギタリストであるベレン・マシューズを同行させていたが、最新アルバムでのドラマーのギャビン・ハリソンの参加は無し。 この手の音楽での打ち込みはあまりにも残念である。 次回はぜひフル・バンドで来日してほしい。 デフ・レパード 武道館 10/24(水) 3年前の来日に行きそびれてしまったので、今回は個人的に雪辱戦であった。 Hysteriaツアーと称するだけに、アルバム "Hysteria" の曲を中心に、アンコールの "Photograph" までヒット曲のオン・パレード。 特に還暦を過ぎたのに、30代くらいにしか見えないフィル・コリンの鍛え上げたマッチョな体型には驚かされた。 最強のロック・ショーである。 ゴング ビルボード東京 10/31(水) 数年前に原宿のアストロホールで観てから、デヴィッド・アレンもジリ・スミスも亡くなってしまった。 しかし今回はゲストでスティーヴ・ヒレッジが参加とのことなので、これは行くしかない。 なお正直に言うと、他のメンバーはまったく知らない人たちばかりであった。 ステージのバックには初期三部作「ラジオ・ノーム・インヴィジブル」のイラストに合わせたサイケな映像が終始流されており、バンドが原点回帰を狙っているのは判った。 それでもデヴィッド・アレンの強烈なビジュアルとスピリットが欠落した喪失感はあまりにも大きく、とても穴埋めできるものではないことも改めて実感。 ポール・マッカートニー 東京ドーム 11/1(木) この数年、毎年のように来日しているポールだが、飽きずに毎回観に行っている。 プログレ系のライブでは観客がほぼオッサンばっかりという現状の中で、老若男女あらゆる層が来ているポールはさすがと言うしかない。 最後のアビー・ロード・メドレーには、毎度泣かされる。 2CELLOS 武道館 11/19(月) 2CELLOSは今までオーチャードやフジロックのグリーンステージで観てきたが、今回は彼らにとって初めての武道館である。 前半はオーケストラを従えてのアコースティック・セットで、後半がAC/DCやアイアン・メイデンなどのいつものカバー版となっていた。 楽器がエレクトリックだとは言え、チェロの演奏に武道館の音響は悪すぎる。 フジロックの野外での演奏もかなり辛かった。 MCで「次は東京ドーム」だとはったりを噛ましていたが、できればオーチャードのような音響がしっかりしたホールにしてほしい。 ボン・ジョヴィ 東京ドーム 11/26(月) 1990年の大晦日に東京ドームで観て以来、実に28年ぶりのボン・ジョヴィであった。 ニューアルバム "This House is not for Sale" の曲に往年のヒット曲を散りばめての演奏である。 たぶんデビュー当時からファンであったのだろう女性たちが「きゃあ、ジョーーーン!!」と叫んだり泣いたりするのも微笑ましい。 アメリカのスタジアム・ロックの王道だ。 キング・クリムゾン 渋谷 オーチャード・ホール 11/27(火) 前回の来日に同様に、オーチャード・ホールでの観戦となった。 来日初日となるこの日はなんと "21st Century Schizoid Man" を演奏しなかったが、セットリストは以前ならあり得なかった曲 "Moon Child" や "Fallen Angel"、"Lizard" などを含む、全経歴にわたるものだった。 なお、その後のセットリストでは "21st Century Schizoid Man" を演奏する代わりに "Larks' Tongues In Aspic Part II" を外したりと、連日かなり曲が入れ替わっていたらしい。 これは全公演観ろというフリップ翁のメッセージなのかもしれない。 岸谷香 ビルボード東京 12/17(月) 2017年に続いて、2018年のライブの〆もビルボードでの岸谷香になった。 今回は若手の女性メンバーのバンドによるアコースティック・ライブである。 岸谷さんのステージは、とにかくMCが面白い。 2019年5月にはツアーを行うとのことなので、お勧め。 ところで岸谷さんは今年51才だが、プリンセス・プリンセスの頃からテンションが全然下がっていないし、20代のバンド・メンバーにも全く負けてない。
もしかすると、これはあと20年はいけるかもしれない。 冒頭の「あと5年」説はとりあえず取り消しておく。 Photo by Brooke Cagle on Unsplash 先日のビートルズ「ホワイト・アルバム」を追いかけるように、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの「エレクトリック・レディランド」50周年記念盤が届いた。 既に11月20日に宅配で到着していたのだが、これは開封の儀を執り行うべき神聖な代物なので、この週末まで取っておくことにしておいたのである。 ところで報道で聞くところによると、我が国が誇る100田センセーの信者たちは、例のコピペ本を購入するや否や神棚に供えているらしい。 傍から見たら似たような光景かもしれないが、こちらはもっと崇高なものである。 まあいい。こんなところで張り合っても仕方がない。 ともあれ開封の儀である。 まず全景だが、記念盤全体はLPサイズにデザインされている。 そして音源はCD 3枚とBlu-rayで構成されている。 CD 1枚目が「エレクトリック・レディランド」本体のリミックス盤で、2枚目はデモ音源やアウトテイク集になっている。 3枚目はなぜか「ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル」。 また記念盤自体が写真集と解説書になっており、なかなか読み応えのある内容になっている。 「エレクトリック・レディランド」のオリジナル版のジャケットは女性のヌード写真で知られているが、解説によるとジミ本人はこのジャケットを激しく毛嫌いしていたとのこと。 ジミが不快な表情を全開にして噛みついている写真が収められている。 今回の記念盤のジャケット写真は、ニューヨークのセントラル・パークでリンダ・イーストマン(言うまでもなく、後のリンダ・マッカートニー)が撮影したものが使用されている。 ジミはこちらを望んでいたそうなので、今回の記念盤で本来の形になったのだろう。 なおこの写真は、ジミの権利関係を管理するエクスペリエンス・ヘンドリックスが設立されてから再発された、1997年のリマスター盤のライナーにも収められていた。 ところで肝心の音であるが、ドラムの音が片方のチャンネルにひと塊になったままなど、さすがにリマスターでも音源の古さをカバーしきれていないところが気になってしまった。 ビートルズのように、徹底的にトラックをバラすことができるようなマスターになっていなかったのだろう。 こればかりはどうにもならない。
Photo by Paul Stollery on Unsplash
ポール・マッカートニーの来日ツアーが無事終了した。 最新アルバム "Egypt Station" からの曲のみならず、ビートルズやウイングス時代のヒット曲も惜しみなく大量に演奏し、あらゆる年齢層のファンを楽しませてくれた。 バンドのメンバーである、Rusty Anderson、Brian Ray、Paul Wickens、Abe Laboriel Jr. の顔ぶれも、前回の来日から変わっていない。 ところで、究極のエンターテイメントを見せてくれた彼らのツイッター・アカウントを覗いてみると、実は音楽に関する書き込みはほとんど無く、逆に政治的発言にあふれていることに驚かされる。 ここでは、今回の来日前後のタイミングでの彼らのツイートをいくつか紹介してみたい。
Rusty Anderson(ギター)
アメリカ人である彼は、来日中の期間ですら、母国のファンに中間選挙での投票を呼びかけていた。
日本公演の初日前日となった10月30日には、カリフォルニア州で自身が支持する民主党候補への投票を促していた。
そして、選挙後もトランプ界隈を徹底的に批判し続けている。
Brian Ray(ギター)
Brianもアメリカ人だが、音楽活動に関するツイートは全くと言っていいほどない。 Rustyと比べると、自身によるツイートは少なくRTが多めであるが、それもトランプ政権批判のものばかりだ。 例えば、トランプ就任後にヘイト・クライムが増加したことを伝えるAFPの報道をRTしている。
Paul Wickens(キーボード)
バンドの中では唯一のイギリス人。 来日を挟んだ期間はツイート数が減っているが、11月14日にはジンバブエの密漁対策チームに対しイギリスの入国許可が出なかったことを批判する記事をRTしている。
Abe Laboriel Jr.(ドラム)
アメリカ人である彼もまた、徹底的にトランプをdisりまくっている。
ステージでの演奏からは伺い知れないことであるが、ポール・マッカートニーのバンド・メンバー全員が極めて政治的、しかもリベラルであることを隠そうともしない人たちであった。
日本で時折見かける「ポールの音楽の話に政治を持ち込むな」みたいな発言は、彼らにしてみれば幼稚で、あり得ないものなのだ。
Photo by Samuel Dixon on Unsplash
2017年の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に続き、「ホワイト・アルバム」の50周年記念となるデラックス・エディションがリリースされた。 リリース初日に早速入手したので、開封の儀を記録しておく。 セット本体はLPサイズより若干小さいものだが、164ページの分厚い写真集と解説集になっており、ずっしりとくる超重量級。
カバーには、かつてのアナログのオリジナル盤のようにシリアル・ナンバーが振られている。 そして音源は、新たにリミックスされたCD 2枚に加え、長らく「イーシャー・デモ」として知られているものが1枚。さらにアルバム制作中の別テイクがCD 3枚にわたって収録されている。またBlu-rayには5.1chの音源やモノラルも収められている。 日本盤には50ページ近いライナーが付いており、一曲ずつが詳細に解説されている。 また、メンバー4人のA4サイズのポートレートと、巨大なポスターも付属している。このポスターは "Glass Onion" のPVでも使用されているもの。 まずリミックスされたCD 2枚を聴いてみたところ、当たり前ではあるがそれぞれの楽器の輪郭や定位が、完璧と言っていいほどに改善されている。 さらに、既にYouTubeで公開されている "While My Guitar Gently Weeps" のアコースティック・バージョンなど、「イーシャー・デモ」や別テイク集にも貴重な音源が満載。 「サージェント・ペパーズ」と共に、こちらも必携である。 Photo by Arnaud Jaegers on Unsplash アメリカの国民的な女性歌手であるテイラー・スウィフトが、中間選挙に関する見解を自身のインスタグラムで公表した。 アメリカのみならず、日本の多くの有権者の方々にも読んでほしい内容なので、ここで翻訳し紹介したい。 私は11月6日の次期中間選挙について、この投稿を書いています。 日本のセレブリティで、ここまで腹を括れる人がいるだろうか。
Photo by Aaron Burden on Unsplash
2018年の前半も、多くの才能あるミュージシャンを失う結果になってしまった。 ここでは国内外合わせて、鬼籍に入った方々を振り返ってみたい。(以下、敬称略)
1月5日 藤岡幹大
BABYMETALを支える「神バンド」のギタリスト。 2017年12月に発生した転落事故の療養中に様態が急変し死去。享年わずか36才。
1月10日 エディ・クラーク
モーターヘッドのオリジナル・ギタリスト。 2015年にフィル・テイラーとレミー・キルミスターが亡くなっているため、エディの死によりモーターヘッドのオリジナル・メンバーは全員いなくなってしまった。 肺炎で入院中の他界。67才。
1月15日 ドロレス・オリオーダン
アイルランド出身のクランベリーズのボーカル。 アルバムのセールスは4,000万枚を超えている。 滞在中のロンドンのヒルトン系ホテルで、亡くなっている姿が発見された。46才。
ドロレスの死に対して、バンドのメンバー達のコメントに続き、アイルランドの大統領も「深い悲しみ」とのメッセージを発表している。
1月16日 デイヴ・ホーランド
ジューダス・プリーストの元ドラマーで、1979年から1989年の10年間叩き続けた。 80年代のNWOBHM時代の代表作 "British Steel" 制作などに貢献している。 ジューダス・プリースト脱退後はトラピーズを再結成し活動していた。 死因は発表されていない。 享年69才。
2月7日 パット・トーピー
Mr. Bigのドラマー。 2014年にパーキンソン病を患っていることを公表していたが、2014年と2017年の来日では病を圧してバンドに同行し、パーカッションとコーラスでライブに参加した。 パットの音楽への熱い思いに観客が感動した矢先の、合併症による様態急変だった。64才。
4月24日 森田童子
70年代にアンダーグラウンドな人気を集め、引退後、テレビドラマに楽曲が使用されることで広く知られるようになった。 本名は一貫して公表せず、引退後の生活も明らかになっていない。 4月に亡くなっていたことも、6月のJASRAC会報に掲載されて初めて世の中に知られるようになった。 65才だった。
5月16日 西城秀樹
言うまでもなく、日本を代表するアイドル歌手の草分け。 「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」をはじめ、数々のヒット曲で知られているが、ライブではキング・クリムゾンなどのカバーを歌い、またテレビ番組でドラマーとしての腕を披露することもあった。 2003年に脳梗塞を発症し、懸命のリハビリで復帰を果たしたものの、2011年に再発してしまった。 4月25日に自宅で倒れ、意識不明のまま心不全で亡くなった。63才。
6月23日 ヴィニー・ポール
パンテラのドラマーで創立メンバーの一人だった。 ラスベガスの自宅で心臓発作で倒れ、帰らぬ人となった。54才。
60代で亡くなった方が多いが、70才を超えている人はいない。
旅立つには若すぎる。 藤岡さんにいたっては30代だった。合掌。 Photo by Hanny Naibaho on Unsplash
何十年も飽きもせず、キング・クリムゾンやAC/DCなどを聴き続けている中高年ロック・ファンはたいへん多い(とあえて断定する)。 このように新しい音楽に対する興味を失う現象を、ストリーミング・サービスの大手 Deezer が「音楽的麻痺(Musical Paralysis)」と名付け、全英でその実態調査を行った。 調査の結果はなぜか Deezer のサイトに掲載されていないが、NMEやLouderなど様々な音楽誌が、断片的に記事にしている。 これらを繋ぎ合わせてみると、凡そ次のような結果が見えてきた。 1,000人の英国人のうち、殆どの人が30才7か月で「音楽的麻痺」に陥っており、その理由は次の通り。
また「音楽的麻痺」に陥っていても、約半数(47%)の人たちは「新しい音楽を発見するための時間が欲しい」と考えており、さらに41%の人たちが「将来は新しい音楽を発見するために時間を使うだろう」と予測している。 一方、音楽の発見のピークは24才5か月となっており、この年齢の75%が毎週10曲以上の新しい曲を聴き、64%が毎月少なくとも5以上の新しいアーティストを探している。 なおピークは地域差があり、スコットランドでは40才7か月と最高齢を示している一方、ウェールズでは24才8か月で、実に16才もの差異が見られる。 こうした調査結果から、いずれの音楽誌も「音楽的麻痺を解消するには当誌をご覧ください」のような結論に導いているのはご愛敬である。 翻って日本のロック・ファンも、「選択肢が余りにも多い」ために「音楽的麻痺」に陥っているのであれば、大変もったいない話ではないか。 まもなくやってくる夏場のフェスは、知らないバンドを聴くための絶好の機会だ。 たまには新しい音楽にも触れてみてはどうだろうか。 イエスのベーシストだったクリス・スクワイアによって1975年にリリースされたソロ・アルバム "Fish Out Of Water" がリミックスされ、ボックスセットとして蘇った。
デジタル音源はCD 2枚とDVD 2枚の計4枚。CDの1枚目は今回新たにリミックスされたオリジナルの5曲。また2枚目は従来のミックス音源に加えて、"Lucky Seven" と "Silently Falling" のシングル・ヴァージョン、アラン・ホワイトとの共作 "Run With The Fox"、"Return Of The Fox" の計4曲が収録されている。
DVDの1枚目は5.1チャンネルのサラウンド音源。
2枚目はビジュアル・コンテンツで、 "Fish Out Of Water" のプロモーション動画と、クリスのインタビューを楽しむことができる。 さらにアナログ音源としてLP丸ごとに併せ、各シングルも付属。
ブックレットは、それぞれの曲のオリジナル・テープのトラックの情報を撮影した写真などが含まれており、資料としても貴重なものであった。
ダメ押しでジャケット写真の裏面を巨大化したポスターまで着いてくる。
往年のファンには至れり尽くせりで涙ものであるが、クリスは既にこの世にいない。合掌。 |