Photo by Dark Rider on Unsplash 7月29日の毎日新聞に「東京五輪 34度超え予測、熱中症対策早急に」と題した記事が掲載された。 桐蔭横浜大学、東京大学都市工学科、環境省、さらには日本ランニング協会まで、研究者や専門家らが「夏の東京は運動を中止すべき危険なレベル」と口をそろえている。 なぜこうした声が今まで出てこなかったのか、まったく不思議なくらいだ。 実際、連日30度を超える猛暑となった7月の東京では、3日に32人が熱中症で搬送、うち3名が重症となっている。 さらに気温が上がった9日は59人が救急搬送され、男性1名が意識不明の重体となった。 また東京消防庁のデータでは、平成23年から27年までの5年間で熱中症により救急搬送された人は20,593名におよび、これらは7月と8月に集中している。 月別の熱中症による救急搬送人員(東京消防庁による) こうした方々の救急搬送時の初診症状は、入院の必要がある「中等症」1,840人、生命の危険が強いと認められる「重症」130人、生命の危険が切迫している「重篤」43人となっており、4人が死亡と診断されている。極めて深刻な事態である。 では2020年に向けて政府の対策はどうなっているのだろうか。 平成27年から「東京2020に向けたアスリート・観客の暑さ対策に係る関係府省庁等連絡会議」が不定期に開催されており、直近では6月19日に会議が持たれ、議事録として各省庁の取組が公開されている。 この資料によると、具体的な暑さ対策は「競技場の屋根設置」「路面温度上昇抑制機能を有する舗装」「競技場周辺の街路樹」となっているが、いずれも根本的な解決策になるとは思えない。 他にも「熱中症等関連情報の発信」や「救急体制の整備」が挙げられているものの、周知活動や事後対策だけでは余りにも無力であろう。 一方、東京都は、5月25日に「東京2020大会に向けた暑さ対策推進事業」の一環として「補助対象地域の決定及び補助事業者の募集開始」を発表している。 具体的には東京国際フォーラム、東京スタジアム、武蔵野の森総合スポーツプラザの三か所の周辺にミストや日よけを設置する内容となっており、各地域にそれぞれ5,000万円の予算を割り当ててはいるが、これも広い東京全域から見ればいったいどれだけの効果があるのか甚だ疑問である。 文字通り焼け石に水と言わざるを得ない。 先日の記事「専門職スキル軽視の蔓延」で指摘したように、五輪スタッフの多くをボランティアに頼る構造になっているが、こうした人たちの健康への配慮に対しても、考慮や議論が為されている形跡が観られない。 ところでこの件をリスク・マネジメントの観点から考えてみたい。 リスクは、発生可能性と影響度の積で表される。 このリスクを分析・評価し、コントロールによって低減させることがリスク・マネジメントである。 では東京五輪での熱中症リスクのケースではどうだろうか。 現実的に予防策はほぼ無策に近いうえ、東京の蒸し暑さに慣れない海外からの選手や観客が大量に訪れるため、数千人規模で熱中症患者が発生する可能性は100%と言える。 むしろ例年よりも多いと考えるほうが正確だろう。 また影響度を軽減するためには、発生した事態から早急に原状回復することが求められるが、医療関係者や救急搬送設備の数には限界があることに加え、五輪開催による幹線道路の封鎖も考慮する必要がある。 したがって「大量に発生する熱中症患者の生命の危機」であるリスクは、現状のままでは軽減されないと考えなければならない。 そしてリスクを受容できるレベルまで軽減するためには、10月以降の開催とする、もしくは中止という選択肢しかなかろう。 毎年同じ季節に開催されているフジロックが2020年にどうなるのか、私には知るすべはない。 しかし確実に阿鼻叫喚の熱中症地獄と化す東京を避けるため、一か月ほど苗場あたりに山籠もりでもしようかと真剣に考え始めているところである。 追記 (23:00 7/8/2017)
屋外でのスポーツや作業中に熱中症で倒れ死亡する事故が全国で相次いでいる。こんな季節に五輪開催とは正気の沙汰ではない。 高校野球部の女子マネージャー 練習後に倒れ死亡 新潟 熱中症か アメフット練習中に学生死亡 札幌 熱中症? 浜松で45歳男性が死亡 伊万里の50代男性、熱中症疑いで死亡
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