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2019年のノーベル化学賞を吉野彰氏が受賞した。 吉野氏らによるリチウムイオン電池の開発がスマホの普及に大きく貢献したことは、私ごときが言うまでもない。 しかし、リチウムイオン電池も軽く吹っ飛ぶ驚くべき技術を体験した方がいる。 自由民主党所属の衆議院議員である杉田水脈氏である。 なんと電源を切ってあるスマホからデータを丸ごと抜くことができるのだそうだ。 とりあえずご本人の弁を記録した動画をご覧いただきたい。
以下、動画から肝心のポイントを抜粋しておく。 でももう仕方がないじゃないですか。
一言で「スマホのデータ」と言っても当然ながらサイズは様々であるが、とりあえず私自身のiPhoneの環境で杉田氏のご高説を検証してみたい。
機種は iPhone X で、ストレージの容量は256GBである。 このうちOSも含めて、現在はおよそ60GBの領域を使用している。 ビットに換算すると480Gbitになる。 キャリアはソフトバンクでLTE回線なので、理論上の最大速度は150Mbpsとなっている。 しかし「データを抜かれる」速度を計算するためには、実際のアップロードの速度が必要だ。 10月13日15時時点での、私のiPhoneからのアップロード実測値は24.2Mbpsであった。
この環境でiPhoneに入っているデータをすべて抜くためには、5時間30分の時間を要する。
空港でチェックインして搭乗するまでの時間では収まらないだろう。 なお現在導入が進められている5Gでは、速度が桁違いに速くなる。 2019年4月に、Verizonの広報担当であるDavid Weissmann氏が計測したところ、ダウンロードで762Mbpsもの速度が出たとのことだ。
残念ながらアップロードのデータは公開されていないが、ダウンロードとほぼ同じ速度が出ると仮定して計算してみたい。 その結果、10分強の時間で私のiPhoneのデータを転送可能であることが判った。 それにしても10分以上も送信しっぱなしであればスマホ本体がかなり発熱するので、注意深い人であれば、スマホが何か不審な挙動を執っていることに気づくだろう。 さらにキャリアの回線以外でデータを抜く手段としては、WiFiのアクセスポイントを悪用することが考えられよう。 ちなみに私の自宅のネットワーク環境は、2Gの光回線にIEEE802.11ac対応の無線ルータで構成されている。 個人ユーザーのスペックとしては、高速の部類に入るであろう。 実際にアップロードの速度を測ったところ、401Mbpsであった。
この環境でiPhone内のすべてのデータをアップロードすると、およそ20分の時間を要することになる。
LTEほどの長さではないが、先ほどの5Gの場合と同様に、スマホ本体が発熱するレベルである。 なお、2019年7月にリリースされたiOS 12.4以降のOSを搭載したiPhone同士であれば、ネットワークを経由せずにデータを移行することも可能である。 しかし2台のiPhoneをペアリングさせるなど、いくつかの手順を踏む必要があるため、他人のiPhoneの中身をコピーすることは不可能だ。 またApple製品の専門誌であるMacRumorsの検証によると、iPhone同士のデータ転送は「iCloudよりは速かった」ということなので、WiFiより多少速い程度と思われる。 ここまでiPhoneのケースで検証してみたが、Androidはどうだろうか。 Androidの場合、あらかじめバックドアを仕掛けておけば、データを抜くことは技術的に可能である。 実際フォーブス誌は、一部のAndroid系廉価スマホに出荷時点で "Triafa" なるバックドアが仕込まれていたことを報じている。 しかしバックドアを悪用したデータ伝送でも、先ほど計算したような時間が必要であることには何ら変わらない。 そして何といっても大前提となるのは「スマホに電源が入っていること」である。 ここで話を杉田水脈議員に戻したい。 彼女によると「スマホを電源を切って鞄の中に入れておいても、空港なんかをこう通過したりとかするときに、全部データを抜かれる」技術が存在するそうだ。 このような技術があれば、5Gすら不要であろう。 しかも当のAppleやGoogle自身も持ち合わせていない技術である。 とにかく極右やネトウヨの皆さんは、前代未聞・驚天動地の技術を数々ご存知のようで、まったく驚かされるばかりである。 例えば、ツイートの文面だけで相手の国籍を読み取ってしまう「国籍透視」能力も、広く普及しているようだ。 一般社会ではまったく知る由もない技術だが、ここはひとつノーベル賞でも目指してもらいたいものだ。
4 コメント
パスカル
7/6/2020 19:09:06
ことしのノーベル賞候補の問題です。
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SLD-MAGICファン
10/6/2020 12:56:36
ダイセルリサーチセンターの久保田邦親博士によるCCSCモデルです。しかしひまやなあ。
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バルブ関係
22/6/2020 22:25:14
ハイテン成形関係でも有名な九大工学部鉄鋼冶金の方ですね。この理論がすごいところは今までのトライボロジー理論は低フリクション性ならそれだけを説明し、凝着(焼付き性)の研究者ならそちらのほうだけを説明するが、これは両者を同時に説明し、特定アイテム(エンジンならピストンリングとかタペットとか)特定のモードの話ではない統一的全体論を境界潤滑現象に展開したところにあると思う。こういうのをパラダイムシフトっていうのかな。
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SLD-MAGICファン
27/6/2020 18:11:23
コペルニクス的転回ですねJAXAの宇宙機器開発なんかも飛躍的に進歩する可能性がありますね。
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