Photo by Igor Ovsyannykov on Unsplash 2017年は日産自動車やSUBARUの無資格検査、三菱マテリアルや東レの子会社、神戸製鋼所のデータ改ざんといった大手製造業での不祥事が相次いで発覚した。 年が明けて2018年、中小企業のプロジェクトでも性能を満たさない問題が国際的に取り上げられる事態になってしまった。 いわゆる「下町ボブスレー」と呼ばれる下町ボブスレーネットワークプロジェクトである。 もっとも下町ボブスレーネットワークプロジェクトは、東京都大田区の中小企業が中心になっているとはいえ、中小企業庁の「JAPANブランド育成支援事業」の一環であり、またボブスレー本体の殆どが東レカーボンマジックだ。 さらに多くの大企業のスポンサーシップを得ての事業であることを考えると、単純に中小企業のプロジェクトとみなすにはかなり無理がある。 むしろ国策プロジェクトのひとつであり、「下町の工場」という主観的な物語を貼り付けた「日本すごい」プロパガンダと考えるべきだろう。 「下町ボブスレー」と冬季オリンピック、もしくはジャマイカ・チームとの関係などは、既に多くの報道で取り上げられているので、詳細は割愛する。 ここでは中小企業庁が毎年発行している「中小企業白書」の2017年度版のデータを使って、中小製造業の実態が「日本すごい」に当たるのか確認してみたい。 まず、倒産と休廃業・解散の状況を見てみよう。 倒産は2008年の15,646件をピークに、2016年の8446件まで低下している。 しかし休廃業・解散の件数は継続して増加しており、2016年度には29,583件に達した。倒産件数の低下だけを見て、景況が改善していると判断するのは拙速である。 次に休廃業・解散に追い込まれた企業の業績に触れておく。 休廃業・解散となった企業の50.5%、すなわち過半数で経常利益がプラスであった。黒字であったにもかかわらず事業を畳んだのだ。 しかも経常利益率が10%以上の企業は13.6%、20%以上の企業も6.1%の率で存在しており、好業績の中で休廃業・解散の意思決定をしている。 なぜ好業績でありながら休廃業・解散の道を選んだのか、その理由については中小企業白書の中でも「不明」とされているが、こうした中小企業の経営者の年齢が高いことなどを考慮すると、後継者難などであろうことが推定される。 たとえ業績がよくても事業を取りやめざるを得ない実態。これが現在の日本の中小企業の姿である。 さらに、中小企業の労働生産性に注目してみたい。 労働生産性を、従業員一人あたりの付加価値額と定義した場合、大企業はリーマンショック直後を底にして回復基調にあるが、中小企業は10年以上にわたって殆ど変わっていない。 また中小企業の労働生産性は大企業の半分以下であり、さらに中小の製造業は非製造業より若干ではあるが低くなっている。 なお労働生産性は、付加価値額を従業員数で割った値であるため、数値を上げるためには付加価値額を増加させるか、従業員数を減らすことになる。 中小企業の製造業では付加価値額が減少しており、また従業員数も減少している。新たな付加価値が生み出されることなく、人減らしで辛うじて数字上の労働生産性を保っているのが実態だった。 最後に、労働生産性の国際的な比較を見てみたい。 OECD加盟国35カ国のうち、日本の労働生産性は22位に過ぎない。しかも上昇率はわずか0.6%であり、順位は28位となってしまう。 以上、データで見てきたように、日本の中小の製造業は「日本すごい」という状態からかけ離れているというしかない。
こうした現状を直視し、現場の取り組みから国の政策まで総動員で対応しない限り、衰退する一方であろう。 まやかしの「日本すごい」で自慰行為に浸っている余裕はもはや残されていない。
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