久保田直己 不撤不散
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Javaの記憶

19/3/2017

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Photo by Lewis Ngugi on Unsplash

Javaは1990年代にサン・マイクロシステムズ(以下サン)が開発、公開したプログラミング言語である。
ちょうどそのタイミングで1996年、私はサンに転職した。
担当した職務は、Javaとほぼ同時に市場へ投入された大型UNIXサーバで小売業界での汎用機市場を奪い取ること、そしてクライアント側を席巻していたマイクロソフトの牙城をJavaで切り崩すことだった。

当時Javaの最大の売り文句は「コードを書き直したり、コンパイルをし直す必要がなく、全てのプラットフォームで稼働する」という点にあった。
折しも小売業界独特のクライアントであるPOS端末は、ほぼ100%、マイクロソフトのWindowsが搭載されており、独占市場であるが故、POS一台あたりに占めるWindowsのコストは結構な高さの比率だった。
そこをJavaとLinuxで置き換えればかなりのコスト・セービングになるはずだと考えたのである。
また、POSの周辺装置であるスキャナーやドロワーなどのデバイス・ドライバーや、アプリケーション・ソフトを開発するために標準化されたAPIが「OLE POS」として提供されていた。
これらはあくまでもWindowsをプラットフォームとすることに限定されていたため、Windowsを切り崩すためのJavaの標準化が必要だった。

サン入社翌年の1997年、アメリカでJavaPOS committeeが組織された。
メンバーにはサンの他、POSメーカーとしてIBMやNCR、ユーザーとしてシアーズやホーム・デポなどが参加し、会合はアトランタのNCR、ラーレーのIBM、パロ・アルトのサンのオフィスで持ち回りで行われた。
アメリカでのJavaPOS committee発足からおよそ半年後、日本でもJavaPOS研究会を設立することになり、まず最初のメンバーとして、アメリカで参加いただいていたIBMやNCRなどにお声がけした。
しかしなにしろ日本のサーバ市場では完全に競合相手である。
よく話を聞いていただいたものだし、参加をいただけたものだ。
次に狙ったのは国産のPOSベンダーと、ユーザーである小売業のシステム部門だった。
小売業の方々の参加は「ユーザーの声を反映する」という建前のために必要だったし、「こういう方々がコミットしてるんですよ」と世の中に示すという営業的な本音のうえでさらに必要だった。
こちらも百貨店、専門店、コンビニエンスストアの各業態から代表的な企業に快く参加いただくことができた。
当時の関係者の方々には深く感謝するしかない。
さてここから日米で歩調を併せて、各周辺機器ごとのAPI策定と標準化ドキュメント作成の作業が始まった。
全部で20あった周辺機器をそれぞれ各POSベンダーに担当を割り振らせていただき、700ページを超える「Programming Guide」として形になったのは、POS業界を挙げての努力の賜物である。
蛇足ながら私自身も序章や用語集などを執筆させていただいた。
なお現在でもWebサイトが残っており、2001年の日本語最終版v1.5がダウンロードできるようになっている。

標準化が策定された次の作業は、実際の製品化である。
サン自身はPOSを製造しているわけではないため、POSベンダーに製造してもらい、それを小売業に導入してもらうための「仕掛け」が必要だった。
そこで考えたのが、毎年3月に開催される小売業向けのIT展示会「リテールテック」で実務を兼ねたデモを行う作戦である。
敢えて展示ブースではなく、飲食の物販を行っている某ファーストフードチェーンにお願いし、メンバーの各社が開発したJavaPOSマシンを使っていただいた。
これは思いのほか評判がよかった。

この後のJavaPOSであるが、全米小売業協会(NRF)が主体となって、OLE POSとJavaPOSの上位レイヤーに当たるUnifiedPOSが策定されることになった。
言い換えると、UnifiedPOSで策定された標準をWindowsにマッピングしたものがOLE POS、JavaにマッピングするとJavaPOSという位置づけになった。
この直後の2001年に私はサンを退職したので、JavaPOSに直接関わったのはここまでである。

サンを退職した2001年以降、ITのプラットフォームは激変した。
​多くのエンタープライズ・アプリケーションは汎用機からUNIXサーバへ移行したが、それが今度はx86サーバ(いわゆるPCサーバ)とLinuxの組み合わせに雪崩を打って移り始めた。
残念ながらサンはUNIXによる成功体験が大きすぎたためであろう、Linux市場への移行に後れを取った。
まさに「
イノベーションのジレンマ」のサンプルのような事態だ。
結局2009年、
サンはオラクルに買収されることになってしまった。
それ以来、Javaのパテントもオラクルである。


POSもまた大きく変化を遂げた。
ちょうどPC市場がスマホやタブレットの直撃を受けたように、PCをベースにしてすべての周辺機器が一塊になったターミナル型のPOSマシンは、タブレット型に置き換えられていく。
タブレットと周辺機器は直接接続されるのではなく、ネットワークを介して通信する形態になったため、標準化もまたUnifiedPOSに加えて
Web Service POSが制定される。
この流れは今後、IoTの一形態になっていくのだろう。


こうした中でPOSベンダーの顔ぶれも変わってしまった。
2012年には
IBMがPOS事業を東芝テックに売却して事業撤退。
また
DSS研究所の調査によると、平成27年度のPOSベンダー別シェアは、東芝テック、NECプラットフォームズ、富士通フロンテックの3社で80%近くを占め、続くシャープと寺岡精工以外のベンダーはほぼ壊滅してしまった状態である。

そしてJavaは組み込み機器からサーバに至るまで幅広く利用されるようになったものの、近年頻繁に脆弱性が発見されるようになってしまい、ブラウザのプラグインからの削除を推奨されるような状況である。
​投入初期に先頭に立って旗振り役を務めた立場としては返す返すも残念だ。
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外資系用語集

18/3/2017

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Photo by Alesia Kazantceva on Unsplash

外資系勤務経験の無い方々にとって、外資系企業の日本法人で当たり前のように使われている言葉が、理解できないケースが多々あるのではないかと思われる。そもそも組織構造が日本企業と根本的に異なるため、言葉の本当の意味を押さえずに単純な和訳だけで理解したつもりでいると、足元をすくわれることになってしまう。
ここでは、初めて外資系に転職する方や、外資系クライアントを担当することになった代理店営業の方などを想定して、解説してみたい。(外資系の中でもIT業界に特化していることはご容赦ください。)
なお表記は、英略語(英フル カタカナ) とする。

Admin (Administrator  アドミ)
主に総務系の人たちだが、営業を内勤でサポートするスタッフも含まれる。

Americas(アメリカズ)
なぜアメリカなのに複数形なのか一瞬不可思議に見えるが、北米と南米を合わせた南北米大陸地区を指すため。

AP/APAC(Asia Pacific エーピー/エーパック)
アジア太平洋地域のこと。日本はビジネスの大きさによって、APに含まれたり含まれなかったりする。APに含まれる場合は、日本とHQとの間にAPが入り三層構造になるので、最終的な承認者がいったい誰なのか混乱する事態も発生する。なお何故かAPのオフィスが置かれる場所はシンガポールや香港の場合が多く、東京のケースは稀である。

Base(ベース)
固定された基本給のこと。これに変動するIncentiveが乗っかって実質的な年収になる。

Budget(バジェット)
辞書的に訳すと「予算」ということになるが、営業が達成すべき目標値として使われる場合と、マーケティング部門などが費用として使用できる金額というまったく異なった意味合いで使われるので要注意。

Chapter 11(チャプターイレブン)
米連邦倒産法第11章。米系の企業で最も聞きたくない言葉のひとつ。いわゆる破産である。90年代のネットバブルの時代に飛び交っていた。

Contractor(コントラクター)
契約社員や派遣社員を指す。正社員としてそのままスカウトされることもある。

Country Manager(カントリーマネージャ)
日本法人の代表。しかし日本の会社法の登記による代表取締役社長と異なるケースも多い。実質的には「日本営業所の営業所長」といったところか。

CxO(シーエックスオー)
いわゆるCEOとかCIOとか、各部門の長。CEOと言えども、株主に承認された「経営のプロ」という職制のひとつでもあるので、業績が悪ければ簡単に首が飛ぶ。

Director(ディレクター)
ヒエラルキーの中では、Managerの上、VPの下に当たる。ただし日本企業の事業部長クラスであったり課長クラスであったりと、本当にどこまで「偉い」のか社外から判断するのが難しい。

Dotted Line(ドッテドライン)
外資系で働くことに慣れるまでの最大の謎の一つ。日本法人の中での直属の上司は「Solid Line」になる。直訳すれば「直線」。しかし営業の責任者であればHQの営業役員に報告義務があり、マーケティングならHQのマーケティング役員と常に歩調を合わせる必要がある。これがDotted Lineに当たる。こちらは「点線」。しかもAPが間に入るとDotted Lineが二本になって、いったいどっちが太いのか訳がわからなくなる。Dotted LineとSolid Lineの対応を間違えるととんだ地雷と化す、日本法人の社員にとっての鬼門。

EMEA(Europe, Middle East & Africa エミア)
ヨーロッパ、中東、アフリカを合わせた地域。なおインドから東がAP/APAC、イランから西がEMEAになるケースが殆ど。

Evangelist(エバンジェリスト)
直訳すると「伝道師」。これもよく判らない職務であるが、新しい技術を世の中に広めていくために、セミナーで講演したり、メディアの取材を受けたりする人。

EVP(Executive Vice President  イーブイピー)
Vice Presidentはそのまま日本語にすると「副社長」ということになってしまうが、日本企業の部長くらいの場合が多い。このため規模の大きい米系企業ではVPが百人単位でいるような、VPのインフレ状態になる。さらにVPを階層化するために設けられた職位がEVPである。企業によってはさらにその上にSenior Executive Vice Presidentがいたりして、これも本当に誰が「偉い」のか、よく見極める必要がある。

Freeze(フリーズ)
PCが固まってしまうことをフリーズというが、これは採用凍結のこと。業績が悪化すると発動される。転職で内定をもらい「さて来月から新天地だ」などという時にフリーズ発動となると悲劇である。フリーズが解除されるまで3か月くらい待たされたり、最悪の場合には内定取り消しになる事態もある。日本法人側も人が足りないので採用するわけだから、いろいろと頑張ってはくれるが、最終的にはHQとの力関係で決まる。

FY(Fiscal Year エフワイ)
文字通り会計年度。殆どの日本企業は4月1日が会計年度のスタートになるが、外資ではカレンダー通り1月1日から開始になる場合が多い。これを「FYとCY (Calendar Year)が同じ」という。なお何故か5月1日とか8月1日とか、中途半端な時期にFYが始まる企業もある。

Head Count(Head Count  ヘッドカウント)
社員数のこと。例えば「来期の日本のヘッドカウントは30人」という場合、全社員数は30人までしか承認されない。数字を上げるために営業へヘッドカウントを回してSEが削られるような事態になると悲惨である。

HQ(Headquarters ヘッドクォーター)
ご本社様。

HR (Human Resource エッチアール)
人事部門のこと。採用も評価も業務責任者が行うライン人事が一般的なので、規模の小さな日本法人ではHRをおかず、給与計算などをアウトソーシングするケースが多い。

Incentive(インセンティブ)
固定給以外のいわゆるボーナスだが、Incentiveは業績に連動する。さらに個人の業績と、日本法人やHQの売上の組み合わせになることもあり、モチベーションをアップさせるためのIncentiveの設定・運用はなかなか難しい。

Inside Sales(インサイドセールス)
内勤営業。中小規模の顧客に電話やメールで対応する。

IPO(Initial Public Offering  アイピーオー)
新規公開株。「スタートアップでIPOできれば、ストックオプションがどかんと上がって人生あがり。」そんな夢を見る時代もありました。

Mar Com(Marketing Communication マーコム)
マーケティング部門の中で、イベントや展示会を企画したり、ブローシャを作ったり、年度末に予算があまったらノベルティを作ったり、なにかと楽しい仕事。

Offer Letter(オファーレター)
転職の際の内定書。オファーレターにサインをすると、双方で採用の意思が確定する。オファーレターにサインしたら絶対に行かなければならないと言われているが、実はそんなこともない。またオファーレターが出た直後にフリーズ発動という可能性もある。

Partner(パートナー)
日本で直販のルートを持たない外資系企業にとって、非常に大切な販売パートナーを指すことが多い。欧米でのビジネスモデルが直販主流である場合、むしろHQ側に日本の事情を理解させることが一苦労になる。
欧米の商流が
 ベンダー → ユーザー
と単純なのに比べて、
 ベンダー → 一次販売パートナー → 二次販売パートナー → SIer → ユーザー
なんていうケースが当たり前のように存在する日本の状況に対して、HQ側での顧客管理システムが対応できない事態も生じる。クレームが生じた場合も「いったいどこの誰が言っているのか」が謎となるが、実はユーザーは全然怒ってなかったなんていうこともある。この商流の長さはそうそう簡単に是正できるものではない。

PR(Public Relation ピーアール)
広報部門。広報はマーケティングの傘下だったり、独立していたり、企業によって様々。

Product Marketing(プロダクトマーケティング)
マーケティングの教科書ではプロダクトマーケティングとプロダクトマネジメントは別の機能とされているが、外資系IT企業の日本法人で、組織として二つが分離しているのを観たことがない。要するにプロダクトマーケティングの名を持つ部隊が、新製品ラウンチの準備や価格政策から、プリセールスやサポートなどの営業活動、果ては日本法人内のIT部門まで全部背負い込んでいるのが実情。

Quarter(クオーター)
四半期。第一四半期や第二四半期を1Q、2Qと呼ぶ。四半期ごとに決算になるため、営業は四半期ごとに目標を設定されリセットされる状況に耐えられるタフさが求められる。マーケティングなどコストを使う部門も今四半期に余ったからといって翌四半期に持ち越すことは基本的に認められない。四半期のコスト実績がプランを超えたら当然怒られるし、余らせても怒られる。帳尻を合わせるために、絶妙な職人芸のスキルが必要な世界。

Solid Line(ソリッドライン)
Dotted Line参照。

Stock Option(ストックオプション)
そんな時代もありました。

SVP(Senior Vice President エスブイピー)
EVP参照。

Tele Conf(Tele Conference テレカン)
電話会議のこと。最近では国際電話の料金を節約するために、Skypeなどを活用する企業も多い。シリコンバレー系の企業の場合、現地の午後にテレカンが設定されると、日本時間の朝3時とかになってしまい、まったく睡眠がとれないことにもなる。こうした事態を避けるため、HQ側に日本の事情を良く理解しておいてもらうリレーション作りも重要。

Time Zone(タイムゾーン)
時間帯。日本より2時間早いメルボルンから、2時間遅いバンコクくらいまでを、だいたい同じタイムゾーンとして、テレカンなどが設定される。

VP(Vice President  ブイピー)
EVP参照。
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