Photo by Alain Pham on Unsplash このところ仮想通貨に関しては、ビットコインの価格急騰やアメリカでの先物取引開始など、何かと話題に事欠かない状況が続いている。 日本でも12月12日、GMOインターネットが従業員の賃金の一部をビットコインで支払うという制度導入を発表し、報道で大きく取り上げられた。 ところで、ビットコインに代表される仮想通貨での賃金の支払いは、日本において法的に問題はないのだろうか。 まず賃金に関する原則を定めた、労働基準法第24条一項を確認しておきたい。 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。 労働基準法においては、賃金は「通貨」で全額を支払わなければならないという「通貨払いの原則」が定められている。 したがってビットコインによる賃金支払いの論点の出発点は、ビットコインが「通貨」に相当するのかというところになる。 ここで、2017年5月25日に成立した改正資金決済法第2条五項での、ビットコインをはじめとする仮想通貨に関する定義を確認しておく。 1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの 非常にわかりにくい文言だが、資金決裁法における仮想通貨は、日本銀行と日本政府が発行する「法定通貨」に換金可能な財産的価値をもってはいるものの、仮想通貨自体は「法定通貨」ではないということだ。
これについては金融庁も、仮想通貨に関するパンフレットで「仮想通貨とは、法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない」と明言している。 では再度、労働基準法に戻ってみたい。 労働基準法によれば、賃金は「通貨」で支払わなければならない。すなわち「法定通貨」と認められない仮想通貨による賃金の支払いは、原則として違法ということになる。 なお、第24条一項の後半で「労働協約に別段の定めがある場合、通貨以外のもので支払うことができる」とされているため、労働協約が締結された限りにおいて、仮想通貨による賃金の支払いは合法と認められる。しかし労働協約とは、労働組合と使用者との間で団体交渉を行い、労使間で合意に達した事項を書面にし署名や記名押印した文書であり、そもそも相対的に弱い立場の労働側を守るためのものである。 激しく価格が乱高下するビットコインのような仮想通貨が、たとえ労働協約があったとしても賃金の支払いとしてふさわしいのか、労働側の生活を守る観点から十分に議論・検討する必要があるだろう。
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