Photo by Jeremy Bishop on Unsplash 2017年10月4日、東京都と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、水泳とトライアスロンの五輪会場として予定されているお台場海浜公園(以下「お台場」)の水質調査結果を公表した。 この調査によると、ふん便性大腸菌群数は最大7,200個/100ミリリットルで、国際水泳連盟が定める基準値「1,000個/100ミリリットル以下」の7倍以上となっている。 トライアスロンの観点でも、大腸菌数が最大5,300個/100ミリリットルも検出されており、こちらは国際トライアスロン連合の基準値「250個/100ミリリットル以下」の20倍以上の値だ。 また都の発表の2か月前の2017年8月、港区による「お台場海浜公園を "泳げるお台場" にするための実証実験」について、TBSラジオが報じている。 お台場海浜公園はもともと、大腸菌の数や水の透明度などが、環境省の「海水浴の基準」を満たしていない日があり水質が不安定…。そのため東京都は、原則として海に入ることを禁止していて、顔を海水につけることも、泳ぐことも出来ません。 海水に顔をつけてもいけない遊泳禁止のお台場で、トライアスロン競技! 呆れるしかないが、こうした問題に対して当の競技団体はどのように考えているのだろうか。 日本トライアスロン連合は、2013年の時点で「東京港お台場水質(Q&A)」というプレスリリースを出している。 一般遊泳には適さなくとも、競技としての水泳は限定的な時間内であり、また、競技として訓練された選手たちの大会であり、対応できるものであると回答し実施されたことがあります。 「一般遊泳には適さなくても、訓練された選手たちなら対応できる」?? 何を言っているのか、さっぱりわからない。 この団体は選手たちの健康や安全を守るつもりがあるのだろうか。 さて、この地域の水質については、2014年に国土交通省が開催したシンポジウム「東京湾の水環境に関する研究」で、東大・水環境制御研究センター教授の古米弘明氏がたいへん判り安い発表を行っている。 この時の講演「台場周辺海域における雨天時越流水の流出特性と水質に及ぼす影響」から引用してみたい。 雨が降ると大腸菌だとか、ふん便性大腸菌という、お腹由来の微生物の濃度が、あっという間に上がってしまうということです。 港湾では干満がありますので、沖合の海水が満ちてくると濃度が下がったりしますけれども、やはり干潮になるとさらに上がるというように、越流が発生すればどこかから必ず到達してきます。 すなわち、下水道システムから雨が降ったときに越流した下水が出てきて、お台場下海浜公園に到達するということになるわけです。 古米教授が指摘する「雨のときの越流の発生」とは、大雨で下水処理場の処理能力が破綻してしまい、下水が河川に垂れ流しになってしまうことである。 実際、当事者のひとつである板橋区は、下水垂れ流しについて、Webサイトの記事「下水処理場は万能ではありません」で、次のように認めている。 平常時は下水処理が順調に機能しているのですが、大雨になると下水がそのまま川に流入する越流水が問題化しています。区部の汚水と雨水が同じ下水管に入る合流式下水道では、雨量が増えて下水管を流れる水量が一定量を越えると、川に放流する構造になっており、これを越流と言っています。東京湾でし尿由来の大腸菌が検出されたり、海浜公園などに一般家庭や飲食店で使用されている動植物油脂等からなる廃油ボールが漂着したりするなどは、越流水による都市問題とされています。 テレビ朝日の報道によると、今年2018年7月になって、東京都がお台場の水質改善の実証実験を開始したという。
しかし五輪本番までわずか2年しかない。 いまさら実証実験を行っているような状況で、果たして間に合うのか。 しかも要因はお台場に限られたものではなく、都内全域にまたがり、非常に複雑なものなのだ。
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