3月25日の朝、X(旧ツイッター)のトレンド欄に「中央大学法学部通信教育課程」なるワードが上がっていた。 私自身が卒業生であるので、いったい何ごとかとクリックしてみたら、歌手の松田聖子さんがここを卒業されたとの報道記事だった。 私が卒業したのは丁度一年前の2023年3月であり、もし卒業が一年遅れていれば卒業式で松田さんとご一緒できていたかもしれない、あるいは松田さんと同窓生になったのだというミーハーな思いを真っ先に抱いた事は告白せざるを得ない。それと共に、松田さんが4年で卒業されたと拝見して、そのご努力に驚くしかなかった。 松田さんのようなトップスターに対して、私が何か語るのも全く烏滸がましいことではある。しかし卒業生の一人として、また現在も科目等履修生として通教課程での勉強を知る立場であればこそ、松田さんのご努力がわかるところもあると思うので、僭越ながらいくつか書き連ねてみたい。 中央大学法学部通信教育課程は、基本的に高校卒業の資格があれば、書類選考を経て、誰でも入学することができる。
しかし卒業することは極めて難しく、大学側が正式に発表はしていないものの、卒業できる率は10%前後ではないかと言われている。 私が出席した卒業式に集まっていた人数から算定しても、だいたいそのくらいではないかと思われる。 なお「留年」という概念はないので、卒業まで何年かかっても構わないし、社会人であれば6年から8年、場合によっては10年以上かけて卒業する方もいる。 ところが松田さんのケースは、ストレートに4年で卒業とのことで、トップ・クラスの学生だったのだろう。 しかもその間、武道館を含む全国ツアーなど芸能活動をフルに行っていたし、さらにご家族の悲しい出来事もあった。 本当にいったいいつ、どんな形で勉強しておられたのであろうか。 仕事のほとんどがリモートで時間に比較的余裕があった私には想像もつかない、壮絶な努力をしておられたのであろう。 さらに驚くべきことは、松田さんが教養科目まで通信で収められた事実である。 既に別の大学を卒業している場合には、取得済の教養課程の単位を利用することができるので、法学関連の科目の履修だけで最短2年で卒業することができる。 私の場合は正にこのパターンであった。 しかし松田さんの場合は、教養科目として英語や第二外国語、心理学や経済学などの人文系科目、そして自然科学系の科目も履修されたはずである。 これがどれくらい大変かということも記しておきたい。 冒頭にも書いたように、現在私は卒業後も科目等履修生の立場で勉強を続けさせていただいており、2023年度は政治学を履修した。 この一科目の単位を取得するだけでも、文献を10冊近く読み、レポートを4本書き、最後に試験を受けなければならなかった。 実際、この政治学の一科目だけでも、相当の労力が必要だったのである。 松田さんは、それを10科目以上もこなしたのだ。 しかも、他大学での経験があればまだしも、初めて大学という場を経験した松田さんにとって、通信での自学自習やレポートに苦しまれたであろうことは想像に難くない。 それに加えての、法学系の専門科目群である。 それから、試験の環境についても加えておきたい。 私が過ごした2年間はコロナ禍の真っ最中で、全ての試験がオンラインで行われていた。 ところが、2023年度からはオンライン試験が廃止されて、旧来のように、会場でのペーパー試験に戻ったのである。 そして試験に持ち込み可能な参照物はせいぜい六法程度、あるいは一切持ち込み不可の科目も多いのが実態だ。 要するに、松田さんの最後の一年は、ガチで試験勉強をして、会場で受験しなければならなかった。 これがどれくらいたいへんな事か、考えただけで眩暈がする。 そういうわけで、松田聖子さんのご卒業は、驚天動地の人並外れたご努力の結晶であると断言できる。 ご卒業、誠におめでとうございます。
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