Photo by Craig Garner on Unsplash 以前、某ITベンダーで資格試験の企画運営を担当していたことがあった。 IT製品のビジネスはベンダー、インテグレータ、販売パートナーなどから成るエコシステムに支えられているが、資格試験業界もまた独自のエコシステムとして対策本関係者やスクール、試験配信業者などを抱えている。 さらに資格試験はIT製品のプロモーションツールとしての一面を持つ一方で、取得人数が多いものほどビジネスとして独立した収益が要求されるなど、外からは中々窺い知れない世界であった。 自分自身が資格試験業界に身を置いていると、担当している資格試験の受験に制限がかかることがあるし、そもそも受験しようという気持ちが沸いてこない。 そんなことを言い訳にして、30年近くもIT業界で仕事をしながら資格を一つも取得してこなかったのだが、さすがに恰好がつかないので、いくつかの資格に挑戦してみることにした。 とは言え、IT関連の資格と言っても様々なベンダーが提供しているものから、経済産業省などの公的機関が実施しているものまで数多くある。 今更年齢的に特定のベンダー製品のエンジニアとして仕事をするわけでもないので、公的でマネジメントの要素を持つ資格を選択することにした。 またスクールに通う費用や時間を節約するために自学自習が前提である。 天に唾するような方針だが仕方がない。 そんなわけでまず選んだ資格が、ITIL試験である。 ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは、英国政府がITサービスのマネジメントのためのベスト・プラクティスを体系的にまとめたもので、2017年5月現在、Version 3になっている。 既に世界中の情報システム部門やシステム・ベンダーなどがITサービスの企画、設計、運用、管理のために活用しており、日本でも総務省による自治体CIO向けのトレーニングで利用されている。 ITILの資格は、基礎となるFoundationから最上位のMasterまで4つのレベルがある。 まずFoundationの試験に合格してから、いくつかのコースを積み重ねながら上位レベルへ上がっていく構造だ。 上位レベルの資格取得は、大学の単位制度に近しいものがあるが、とにもかくにもまずFoundationを取らなければ話にならない。 ITIL Foundationの試験は日本の場合、認定試験機関のEXINが運営しており、さらに指定配信会社になっているプロメトリックやピアソンVUEの会場でオンライン受験することになる。 このため最寄りの試験会場でいつでも受験することが可能で、要するに合格できそうな状況になって申し込めばよいため、非常に便利である。 しかし問題は受験料の26,000円だ。 日本独自の公的な試験であるIPAの情報技術者試験は5,700円、中小企業診断士でも13,000円である。 CCNCやオラクルマスターなどベンダーの資格試験とほぼ同じ価格レンジではあるが、やはり高い。 言葉を変えれば、自腹で再受験はしたくない。 勉強のためのテキストは、大体2,000円から3,000円前後のものが殆どなので、こちらは費用的な問題はない。 私はマイナビ出版の「ITILの基礎 -ITILファンデーション(シラバス2011)試験対応」を使ったが、他にもいくつか出版されているので、好みのものを選択すればいいと思う。 ところでITILのベスト・プラクティスは大きく5つのテーマに分かれており、ITサービスを企画、設計、移行、運用するプロセスが、それぞれストラテジ、デザイン、トランジション、オペレーションに相当する。 また全体を通して継続的サービス改善のプロセスが必要になる。それぞれのプロセスの細かい学習に入っていくと、この全体像を見失いがちになるので、常に5つのプロセスを俯瞰する意識を持つことがコツの一つかと思う。 また、テキストを読んだだけで判ったつもりになりがちだが、これは危険だ。
一回や二回読んだ程度では2日も経てば忘却の彼方へ消えるのが当たり前である。 そのためインプットした知識を定着させるべく、模擬試験でアウトプットする工程が非常に重要になるのだが、残念ながらITIL Foundationの過去問題は市販で出回っていないし、またテキスト巻末の問題も微々たる量である。 そこでお世話になったのがping-t.comで無償提供されている問題集だ。 これは本当に有難かったし、心から感謝したい。 受験される方には是非利用してみていただきたい。 さてITIL Foundationの試験当日だが、全40問を一時間でこなすことになる。 問題は4択で、1分半で一問を片付けなければならないから、悩んでいる暇はない。 しかし合格ラインは65%で、40問中の26問に合えばいいのだから、落ち着いて肩の力を抜いた程度でちょうどいい。 またオンライン試験であっても、気になる問題にはチェックをつけて後から見直すことができる。 本番ではとにかく全部解答して、再度見直すくらいのペース配分がちょうど良いと思う。 そしてオンライン試験だからこそ、提出ボタンをクリックした瞬間に合否を確認することもできる。 合格証はEXINのサイトからPDFでダウンロード可能で、また別途申し込めば硬い紙に印刷されたものを取り寄せることもできる。 その後上位レベルを目指すのであれば、コースの積み重ねとなるが、さすがにここからは自学自習という訳にはいかない。
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