Photo by Luis Graterol on Unsplash 2020年に東京で予定されていたオリンピックとパラリンピックは、コロナ禍のため2021年に延期された。 しかし、そもそも酷暑の東京で開催は可能だったのだろうか。 そこで、環境省の報告書「全国の暑さ指数(WBGT)の観測状況及び熱中症による救急搬送者数と暑さ指数との関係について」を用いて検証してみたい。 環境省は全国11都市の日々の「暑さ指数(WBGT)」を週次で公表している。 「暑さ指数(WBGT)」とは、人間の熱バランスに影響の大きい気温、湿度、輻射熱の3つを取り入れた暑さの厳しさを示す指標で、熱中症を予防するために考案された。 国際的にもISO7243として規格化されている指標である。 日本では「暑さ指数(WBGT)」を用いて、日本スポーツ協会が「熱中症予防運動指針」を定めており、さらに日本生気象学会は「日常生活における熱中症予防指針」を定義している。 運動に関する指針 日常生活に関する指針 それでは、オリンピックが開催されるはずだった2020年7月22日(水)から8月9日(日)までの期間の、東京での「暑さ指数(WBGT)」を見てみよう。 「暑さ指数(WBGT)」と屋外競技の日程をマッピングしてみたのが、このチャートである。 * 陸上競技のうち、9月6日から9日のマラソンや競歩は会場が札幌であるため、グレーアウトして検証から除外した。 * サッカーは宮城や福島の会場もあるが、並行して首都圏での開催もあるため、検証に含めた。 一目でわかるように、8月に入ってからは真っ赤であり、「運動は原則中止」のレベルであった。
日常生活での指針でも「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」状況であるため、屋外での観戦やボランティア活動も極めて危険だったと言わざるを得ない。 また比較的涼しかった7月でさえほぼオレンジで埋め尽くされている。 これは、運動については「厳重警戒(激しい運動は中止)」すべき状態で、日常生活も「外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する」必要がある。 こんな天候の東京でオリンピックを強行していたら、選手、観客、ボランティアなど関係者にどれだけ健康被害が出たことになったのだろうか。 このように、熱中症の観点だけでも、真夏の東京でのオリンピックは不可能である。 そしてコロナ禍の状況がどのようであっても、来年も実施してはいけないことは明白だ。
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