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9月14日、米国在住のジャーナリストであるスティーヴン・モナッセリ氏が、極右サイトのホスティングやレジストラとして悪名高い Epik 社から、大量のデータが流出していたことをすっぱ抜いた。
ワシントン州サマミッシュに本社をおく Epik は、ドメイン・レジストラとウェブ・ホスティングを事業の柱としている。
2009年に現 CEO であるロブ・モンスター(ちなみに実名である)が創業した企業である。 これだけであれば、よくある所謂「IT企業」の一つに過ぎないが、実は Parler、Gab、The Storm Front、prolifewhistleblower、8Chan、BitChute、Patriot.winなどの極右サイトにプラットフォームを提供していることが、半ば公然の秘密であった。 今回流出したデータは、こうしたサイトが10年間にわたって蓄積してきたもので、実に180GBもの容量に及ぶとみられている。 このデータのなかには、レジストラ間でドメイン名を移管するために必要な認証コードやパスワード、50万を超える秘密鍵、支払い履歴、メールのアーカイブなどが含まれており、しかも、それらがすべて暗号化されていない平文で保管されていたと言われている。 Epikの悪名が知れ渡るようになったのは、2018年10月27日に、ピッツバーグのシナゴークでユダヤ教徒11人が虐殺された事件であった。 この虐殺の犯人であるロバート・グレゴリー・バウアーは、Twitter を追い出された極右やレイシストが集まる代替手段 Gab に、虐殺の計画を投稿していた。 この事件の直後、Gab のドメイン・レジストラであった GoDaddy は Gab に対するサービスを打ち切って追放したが、その Gab へ新たにプラットフォームを提供したのがEpikだった。 Epik は、2019年8月から、Qアノンや人種差別主義者の温床となっている 8chan もホスティングしてきた。 8chan は、AWS のホスティングや PayPal の決済サービスを拒否されてきたが、Epik は PayPal に代わる決済サービスまで提供していたのだった。 (なお最終的に、8chan は Epik からも追放されている。) 2021年1月6日に発生した、トランプ支持の白人至上主義者たちによるホワイトハウス襲撃テロをきっかけに、極右が集まる SNS として知られる Parler が AWS から追放された。 そして、またしても Parler に代替のプラットフォームを提供したのが、Epik だった。 Epik は、ネオナチのブログである Daily Stormer にまでプラットフォームを提供している。 2021年9月にテキサス州で中絶禁止法が施行されたが、妊娠中絶を求める女性を当局に密告するためのサイトも、Epikが一時的にホスティングしていたことが判明している。 Epik は、共和党右派、宗教的原理主義者、フェイク情報サイト、ヘイター、白人至上主義者らの「たまり場」として機能してきたが、間抜けなことに、こうした連中の情報を暗号化もせず運営していたのである。 データ流出直後、こうした状況をモナッセリ氏に指摘された CEO のロブ・モンスターは「何もないハンバーガー (nothingburger)」と嘲笑っていた。
しかし実際は、ロブ・モンスターが強がるほど甘いものではなかったのだ。
Epik は9月19日の深夜、データ漏洩を認める謝罪メールを顧客へ送信している。 メールの内容は、極めて深刻な事態が発生したことを伝えていた。 緊急のセキュリティ通知のためにご連絡いたします。
今回流出したデータは、既に ddossecrets.com などからダウンロードできるようになってしまった。
そして凶悪な極右サイトやヘイト・サイトが、実際に誰によって運営されていたのか、明るみにするための解析作業が始まっている。
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