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この数年、プログレ系の集まりで知り合った人たちの中で、周辺諸国に対する根拠なき蔑視を口にしたり、ファシズムを公然と肯定する連中がいて閉口したことがある。 その都度たしなめはするのだが、中には頑迷な排外主義を意地でも変えようとしない人物もいた。 こういった人たちとの付き合いに時間を費やすほどこちらも暇ではないので、同じ趣味を持つ間柄と言えどもSNSでのつながりを含め一切の関係を断つことにしている。 プログレの様式美がファシズムと相性がいいのではと仮説を立ててみたが、プログレ・マニアの多くが排外的なわけではないので、音楽的な好みとの有意性はないと信じたい。 またミュージシャンの側はむしろ積極的に反レイシズム、反ファシズムの立場を表明しているのが事実である。 ここでは、そのいくつかのサンプルを見てみたい。
ピーター・ガブリエル
ジェネシスのヴォーカルだったピーター・ガブリエルは、三枚目のソロ・アルバム「III」に”Biko”という曲を収めている。 これは南アフリカの反アパルトヘイト活動家で、1977年に30才の若さで獄死したスティーヴン・ビコ氏に捧げられたものである。 ピーターは、ライブでのMCで「非暴力でレイシズムに立ち向かい、南アフリカの刑務所に収監、拷問で殺された勇敢な男、スティーヴン・ビコ」と紹介している。
ゲディ・リー
カナダの人気トリオ、ラッシュのベーシストであるゲディ・リーの両親はユダヤ系ポーランド人で、ナチスのダッハウ強制収容所とベルゲン・ベルゼン強制収容所からの生還者である。 その後二人はカナダに移住し、1953年にゲディが生まれた。 ゲディは、幼少時に母親からホロコーストの話を聞き、悪夢を見て眠れなかったことがあると話している。 また両親のホロコーストの体験に基づいて ”Red Sector A” という曲を書いた。
ブライアン・イーノ
ロキシー・ミュージック出身のブライアン・イーノは、デヴィッド・バーンやロジャー・ウォータースらと共に、パレスチナ問題にコミットしているミュージシャンの一人である。 2014年7月、イーノはデヴィッド・バーンへの書簡という形で、イスラエル軍によるガザ侵攻を強く非難した。(なお書簡全文を翻訳したので、こちらを参照いただきたい。) また2017年7月には、難民救済のNGO “MOAS” を支援するため、コールドプレイとシングル “A L I E N S” を共作、プロデュースし、アニメとして発表している。
ロジャー・ウォータース
ロジャーは、イーノのパレスチナ問題に関する書簡に対して、自身のFacebookで強い賛同の意を表明した。 この中で「沈黙と無関心は最大の罪」(To stand by silent and indifferent is the greatest sin of all.)と明言している。 また最近のライブでは、ピンク・フロイド時代の曲 “Pig” の演奏で米大統領トランプのイメージを使い、「豚野郎」と断じている。
トッド・ラングレン
トッドもまた、反トランプの意志を明確に表明している一人である。 2017年5月には、スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとの共作で、反トランプの楽曲 “Man in the Tin Foil Hat” を制作し、徹底的にトランプをこき下ろしている。 この曲の動画で登場する「ビル・オランウータン」(Bill O’Rangutan)とは、トランプの御用メディアとして知られるFox NewsのBill O’Reilly を揶揄したものであるのは明白だ。
レイシストやファシストがジェネシス、ラッシュ、ロキシー・ミュージック、ピンク・フロイド、トッド・ラングレンを聴くのは、彼らに対する冒涜であり、また人類に対する冒涜である。
スティーリー・ダンも禁止。彼らの音楽を聴きたいのであれば、まずレイシストやファシストであることを止めるべし。
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