久保田直己 不撤不散
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「ごはん論法」でぐだぐだになった自民党総裁選討論

16/9/2018

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写真は朝日新聞のYouTubeチャネルの動画からキャプチャー

9月14日、日本記者クラブの主催で、自民党総裁選の候補である安倍晋三と石破茂の公開討論が、二時間にわたって行われた。
討論の最中から、安倍晋三の支離滅裂な発言や不誠実な態度を指摘する声がネット上で流れてきたので、実際にどのような討論が成されたのか、確認してみることにした。
討論の動画は、朝日新聞、東京新聞、FNNなどのYouTubeチャネルで観ることができる。
今回は朝日新聞による動画から引用したため、以下の時刻表示は朝日の動画のものとご理解いただきたい。
なお討論は二部形式で構成されており、第一部は「候補者二人による討論」、そして第二部は「記者クラブの企画委員からの質問への回答」となっている。

​まず第一部では、候補者がテーマを自由に選んで相手に質問し、相手が回答したあと再質問あるいは反論するという形式となっていた。
最初に口火を切ったのは、現職の総裁である安倍である。
安倍「地方政策のどこに問題があったのか。」
石破「後継者がいない。そして付加価値を上げることを支援しなければならない。」
安倍「問題点を指摘することも大切だが、具体的な政策を進めることも大切。」
自分で問題点に関する質問をしておきながら、「問題点を指摘することも大切だが、具体的な政策を進めることも大切」とは、いったいどういう了見なのであろう。
出だしから不誠実さが全開である。
​次に石破から民主主義のあり方について質問が成された。ここで驚くべき発言が飛び出す。24分経過したあたり。
石破「民主主義のありかたについて訊きたい。民主主義が有効に働くにはどうすればいいのか。きちんと情報を提供することと、少数意見を尊重することだ。」
安倍「絶え間ぬ努力が必要。正確な情報を伝えていくことが求められている。」
石破「政府から出てくる数字が実際と違っていたり、撤回されて、正確な情報を伝えていることになるのか。野党の後ろには国民がいる。国民の納得を高めていくための考えがあれば訊きたい。」
安倍「今の安倍政権が執っているのはトリクルダウンの政策だとの主旨の話をいただきましたが、私はそんなことを一度も言ったことはありません。」
トリクルダウンだと一度も言ったことはない?!
ではここで2013年12月19日、日本アカデメイアでの安倍晋三のスピーチを振り返ってみよう。
大企業の業績回復の果実が、国内の中小・小規模企業、そして、その従業員の皆さんに、行き渡らないようであれば、アベノミクスは失敗であると、私は考えています。
確かに「トリクルダウン」という言葉は使っていない。
しかしこれは「パンは食べたが米は食べてないから朝ごはんは食べていない」という「ごはん論法」の典型例である。
この後、自衛隊に関する討議に続き、石破から社会保障に関する質問が出される。34分前後の発言。
石破「社会保障のあり方について訊きたい。医療保険ができた時からまったく違う状況になっている。高齢者の方々が誇りをもって暮せ、保育は福祉だという原点に立ち返る必要がある。」
安倍「まず働き方を変える。65才以上の雇用が継続されることが可能になる制度を作る。年金も70才を超えても受給年齢を選択できるようにしたい。」
石破「生活保護以下の人たちが300万人いるが、実際の受給者は70万人。こういう人たちに光を当てていかなければならない。総裁の意見を聞きたい。」
安倍「いくつになっても、どんな状況になっても再出発できる、様々なライフステージで、様々な働き方ができる社会にしていく。」
65才になっても、70才を超えても、いくつになっても働けと。
社会保障の議論になっていないばかりか、めちゃくちゃな主張だ。
そして社会保障の話題から、格差是正や働き方に関する議論に流れるが、ここでもまた恐るべき発言が飛び出す。
安倍「格差が今広がっているのか、そうではないのか。」
石破「企業が収益を上げたが、労働者へ廻る労働分配率は40数年ぶりの低迷。過労死するまで働いて、どうしてこういうことが起こるのか。所得を上げていかなければならない。残念ながらそうはなっていない。」
安倍「企業が収益を上げて分母が大きくなっているから、労働分配率が下がっている。最低賃金が26円上がったのは28年ぶり。」
​企業は収益が上がっているのに労働分配率が下がっているという事実に対し開き直るばかりか、最低賃金がわずか26円だけ上がったことを自慢しだす始末である。
第一部の〆は、最近頻発している災害に対する対策の話題だった。
石破「災害列島に対する対策を教えてほしい。平時からの態勢が必要である。」
安倍「既にやっていることもある。国土強靭化のための対策を三年でやっていく。ライフラインを維持できるように全国で点検する。タイムリーに糾合できるのは総理大臣だけ。」
石破「防災省として一つのところで全部対応することが大切。被災者の立場に立った防災とは何なのか。」
安倍「民主党時代とは違う。私が指示を出す。例えばコンビニ。」
防災省が必要だと主張する石破に対して、「首相である私が指示を出す」と言い張る安倍晋三。しかも行政機関でも何でもないコンビニ。呆れたものだ。
今年7月5日の豪雨で、西日本を中心に11万人もの人々が避難する夜、「赤坂自民亭」と称して飲み会を強行していたのは、いったいどこの誰なのか。
それだけではない。2014年2月16日の豪雪で、山梨県全域がアクセス不能になっている真っ最中、首相が赤坂で呑気に天ぷらを食べていたのも記憶から消えてはいない。
広島の土砂崩れでも、熊本での地震でも、この人物がいったい何を指揮したというのか。

後半一時間の第二部は、記者クラブの企画委員による代表質問である。
第一部では二人の候補者へ均等に時間が配分されたが、第二部は現役の総裁である安倍が集中砲火を浴びることになった。
委員「内閣不支持の最大の理由が、総理大臣を信頼できないとなっている。なぜこうなっているのか。何をすべきなのか。」
安倍「(加計について)私の妻や友人がかかわってきたことでございますから、国民の皆さまが疑念を持つ、疑惑の気持ちを持つというのは当然のことなんだろうと。」
委員「(モリカケと昭恵について)いくつかの事実で見れば、幅広い意味で関係があったと思う。その関係を意図的に狭めて答弁しているように見える。一点の曇りもないという言葉とはあまりにも隔たっている。」
安倍「答弁の記録をちゃんと読んでいただければお分かりになるであろうと、こう思うわけであります。」
この後もぐだぐだの言い訳が続く。持ち時間がオーバーして、司会から注意されても無視してしゃべり続ける。
国会答弁でもよく見る姿だ。
委員「国会に嘘をついた。総理大臣の職を辞しても当たり前だと思う。そういったことが頭をかすめたことはないのか。」
委員「加計に利用されたとも言えるのに、なぜ抗議しないのか。」
さらに、ぐだぐだぐだぐだ。
委員からの「そんなことは訊いていない」との声も遮って、ぐだぐだぐだぐだ。
委員「膿を出しきったのか。」
安倍「出し切ったとかそういうことではない。」
既に第二部になってから20分が経過している。
YesかNoかで応えるべき質問から、なぜ逃げ回るのか。
質問から逃げているだけではない。
2017年2月17日の衆議院予算委員会での森友学園に関する自分自身の発言「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」からも、ひたすら逃げ回っているのである。

​続く経済政策についても、委員の「経済政策でもマイナス面を振り返って進めるべきだ」との声に対し、またもぐだぐだぐだぐだ。
司会から「簡潔にお願いします。」と叱られてしまう。
アベノミクスの後始末についても、こんなザマだ。
委員「アベノミクスを続けてきた結果、日銀の国債保有量がこれほどの大きさになった。世界の中央銀行でも例がない。このリスクの高い不正常な状態をそのまま次の政権に引き渡すのか。道筋をつけて引き渡すのか。」
安倍「緩和政策については黒田さんに任せています。」
災害対策であれほど自分が指揮を執ることを譲らなかったのに、国債政策になったとたん、日銀の黒田に放り投げる態度。
いったい何を言っているのだろうか。
そして1時間38分あたりで、話題が拉致問題に変わり、ここでも驚くべき発言が出る。
委員「拉致問題が解決できるのは安倍政権だけだと言っていたのに、いったいどうなっているのか。」
安倍「拉致問題が解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません。ご家族の方がそういう発言をされたことは承知している。」
委員「進んでるんですか。」
安倍「あらゆるチャンスを逃さずに掴みたい。」
散々拉致問題を政局に絡めておきながら、「拉致問題が解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません」とは、よくも言えたものだ。
しかも被害者家族への責任転嫁とも取られかねない、配慮のない言葉まで続いている。
なお2012年12月28日に、家族会・救う会が首相官邸で安倍晋三に面会した際には、このような発言を残しているのである。
安倍総理は、「拉致問題の解決は私の使命」などと述べた。
またしても、「ごはん論法」炸裂だ。

討論の動画を丸二時間観ていたら、気分が悪くなってしまった。
「ごはん論法」によるごまかし、論点をずらして討論からの逃亡。
国会中継で日常的に見ることができる姿だが、メディアはニュース用に編集した情報として流すため、その実態がなかなか有権者の目に触れることはない。
そして政治部の記者たちによる会見も、通常はなれ合いで酷いものである。
今回の記者会見のように、全メディアは政権に鋭く突っ込んで、その結果答弁がぐだぐだに崩れていくありのままの姿をきちんと報じてほしいものだ。
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