久保田直己 不撤不散
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自覚なきブラック企業

30/4/2017

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長時間勤務による過労死や残業代未払いなど、所謂「ブラック企業」の問題が指弾されて久しい。
大手企業の場合、労働基準法を熟知しながら敢えて違法すれすれの運用をしたり、組織的に記録を改ざんするなど意図的で悪質な例が後を絶たないが、中小企業の場合は、違法行為であるという自覚すらないケースがある。
​今まで経験した事例から考えてみたい。

経営戦略がない
​

このタイトルを見て、意味がわからない方も多いのではないだろうか。
意味がわからないが、実はこれが多くの中小企業の実態である。
中小企業庁が毎年発行している「小規模企業白書」の2016年度版によると、小規模事業者の法人のうち、実に36%が「経営計画を作成したことがない」とアンケートに答えている。
小規模事業者の定義は「常時使用する従業員数20名以下の事業者」であるが、もう少し規模の大きい中小企業でも、経営計画を立案せず、経営戦略がないまま突っ走っているケースがあることは容易に想像がつく。
さて某周辺機器メーカーのケースは、正にこの典型的な例であった。
営業へ配属されると、いきなり利益のノルマを課され、そして顧客リストらしきものを渡される。
このリストがとんでもない代物で、3年前の展示会で集めた名刺だったりするのだ。
こんなところへ電話を掛けたって先方は覚えているはずもなく、例え記憶があっても「何で今頃電話してきたんだ」と怒られるのがせいぜいである。
当たり前だ。
通常、予め申込者が把握できている自社イベントであればイベント翌日には参加者と不参加者に分けて一斉メール配信などを行うし、一般的な展示会で収集した名刺でも遅くとも2週間以内には精査してコンタクトを開始する。
リード・ジェネレーションの基本中の基本である。
ところがこの企業ではすべての施策がやりっぱなしであった。
PDCAサイクルのうち「D」だけを延々と繰り返している。
投資対効果もあったものではない。
そして利益ノルマだが、例えば月100万円の利益を粗利20%で出すためには、月額500万円の売上が必要になる。
500万円の売上を毎月継続的に作るためには、パイプラインでその10倍の金額、すなわち5,000万円くらいの案件は持っていなければならない計算になる。
こうした数字はSalesforceのようなCRMツールを使って管理するのが理想的だし、そうでなくても最低限Excelで管理して毎月見直すことぐらいは行うはずだ。
そしてリードをきちんとナーチャリングしていれば、パイプラインはできあがっていく。
しかし、ここではリードが放置され、まったく根拠のない利益ノルマだけが与えられる。
現代の竹槍。
根本的に、この企業では経営計画も経営戦略もなく、結果として日々の戦術に展開されることもない。
だから意味のない作業が延々と強要され、金を産まない長時間残業だけが繰り返される。
会社側も従業員も誰一人幸せになることはない。
​こんなことに付き合うだけ人生の無駄である。

労働関連法を知らない
 
これも驚くべきことであるが、労働基準法などを敢えて踏みにじるというレベルではなく、守るべき法規を本当に知らないので、平然とめちゃくちゃなことをやる。
件のメーカーでは、新卒や中途に関わらず、入社後の半年間は就業開始の40分前に出社してデスクの雑巾がけをすることになっていた。
この作業の分は賃金として支払われない。
いわゆる「サビ残」の一種で、完全に労働基準法違反だ。
悪質な企業の「サビ残」の場合、証跡が残らないようにやるものだが、ここはある意味違っていた。
この件を就業規則に堂々と記載していたのである。
しかも日々の「掃除チェック表」まで作成してオフィス内に吊るしていた。
全部コピーを取って労基署へ持っていってくれと言わんばかりだ。
そして当然ながら労基署へ持っていかれることになった。
また退職に対する対応もでたらめだった。
民法上は、従業員側からの退職の申し出は2週間前までで構わないとされている。
しかし引き継ぎなどがあるし、常識の範囲として一か月前までには会社側へ提出するのが一般的だろう。
ところが退職希望の一か月前に退職届を出したところ、会社側は「では退職日を今月末にする」と言ってきた。
一か月分の給与を払いたくないからだ。
​これについても労基署行き。その結果労基署の指導が入り、「来月は出社しなくてもいいから給与は満額支払う」と掌を返したような対応になった。

コンプライアンスに無頓着
 
法的にグレーゾーンであっても、ダメなものはダメである。
例えば、採用時の圧迫面接。非常に威圧的な態度で応募者の対応を見る手法だが、強い立場を悪用したある種のパワー・ハラスメントとも言える。
こんなやり方を許しているような企業は、入社してもどんな環境が待っているのか推して知るべしだ。
そもそも入社しない限り、応募者と会社は赤の他人に過ぎない。
むしろ採用で縁が無かったからこそ、その応募者がいつ取引先になるか分からないし、ましてやコンシューマ向けの製品を扱っている企業であれば、もう二度とその企業の製品は購入されないという深刻なネガティブ・インパクトに直結することを肝に銘じるべきだろう。
また社内においても、人事管理の基本的なルールが判っていないケースもある。
例えば、部下を何等かの理由で叱らなければならない時は通常、個室で他人に見えないようにするものだ。
ところが逆に、社長が社員を叱る際、相手が役員だろうが一営業だろうが、できるだけ多くの人を集めて吊るしあげる企業があった。
さらに酷いことに、「お前もそう思うだろう」と周囲に同意を求めるのだ。
文革の紅衛兵かよ。
ここは社員の定着率が極めて悪く、早ければ三か月、長くても二年で多くの人が去っていった。
​愚かなことだ。
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