久保田直己 不撤不散
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ビットコイン・バブルの既視感

2/2/2018

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Photo by Andre Francois on Unsplash

代表的な仮想通貨であるビットコインの価格の乱降下が激しい状態になっている。
2017年5月には13万円台であったのが、半年間にじわじわと上昇を続け、12月にはいると一気に急騰し、最高額で223万円に達した。その後の価格は上下を繰り返しながらも、一ヶ月で半値にまで下落している。
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出典:「ビットコイン(Bitcoin)価格・相場・チャート」(bitFlyer)
このチャートを眺めると、ある年代以上の人にとっては激しい既視感があるだろう。
80年代半ばのバブルと、その10数年後に形を変えて訪れた90年代後半のネット・バブルである。

1986年2月のNTTの上場を皮切りに日経平均株価は急上昇を続け、ついには1989年12月29日、東証納会で史上最高の38,957円をつけた。
地価も株価と共に急上昇した。1985年から1990年までの5年間で、住宅地・商業地ともに地価は毎年数十パーセントもの上昇率を続けている。
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出典:日経平均株価(月末値)(Wikipedia)
バブルは就職戦線にも波及した。
私が新卒で就職した大手ITベンダーは数年続けて、毎年1,500人から2,000人もの新卒採用を行っていた。
頭数に比例して売上げを拡大できると、経営側が単純に考えていたのだろう。
後の世代には申し訳ないくらい売り手市場だったが、別に私たちの世代がとりわけ優秀だったわけでも何でもない。たまたまバブルのタイミングに当たっただけのことだ。

しかしこんなことがいつまでも続くわけはなかった。
バブル崩壊である。
​東証では最高額に達した直後の1990年1月の大発会で株価が暴落し、その後20年以上にわたって低迷を続けている。
私の勤務先も一転して大量採用から人員削減へ方針を大転換した。お世話になった先輩たちが次々と職場を去っていく状況で、士気を維持できるはずもない。
結局1996年、11年間勤務した最初の職場を辞める決意に至った。

1996年11月、私はサン・マイクロシステムズ(以下サン)へ転職した。
当時、サンはJavaのテクノロジーをラウンチし、また大型のサーバを投入して、エンタープライズ市場へ参入を始めたタイミングだった。
しかしこれも私に特別な見識があったわけでもなく、その後のネット・バブルを予測していたわけでもない。
本当にこれも「たまたま」であった。

その後、サンはインターネットの急速な普及に乗って大きく業績を伸ばした。
株価も1996年に3ドル程度だったものが、2000年のピークには100ドル近い価格をつけている。
​しかもこの4年間の間に数回の株式分割を行っているため、実際の株価の上昇率はさらに大きいものだった。
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出典:【誤算の研究】サン・マイクロシステムズ(日経ビジネス)
この頃、ネット関連のビジネスであれば収益の見通しが甘くても、資金調達を得て株式公開を行うスタートアップ企業が続出した。
こうした需要に応じて、サンのサーバが大量に売れたのだった。
このビジネスモデル自体が、今となってはネット・バブルと呼ばざるを得ないものだったのである。
そして私自身もその渦中にいた。

他のシリコン・バレー系の企業と同様に、サンもまた従業員の士気を高めるためにストックオプション制度を大幅に取り入れていた。
​私が初めて貰ったストックオプションの価格は5ドル程度だったと記憶している。それが数年で数十倍になったのだ。
その後に貰った分も併せると、ピーク時の含み益は莫大な金額に達していた。一日の株価の変動が、月収の何倍もの金額に相当することもあった。
80年代のバブル期以上に、金銭感覚は完全に麻痺してしまった。それにも増して危険なのは、こんな状態が永遠に続くような錯覚に陥ることだった。

2001年8月、私がサンを去った時点で業績は崩れ始めており、株価はピーク時の半分になっていた。
ところがこの期に及んでも、株価がさらに下がるとは全く考えることができず、同僚たちと「今が株を買い足すチャンスだ」などと軽口を叩いたことを記憶している。
しかし現実は厳しく、サンの業績は下がり続け、株価はあっという間に10ドルを切るところまで落ちてしまったのである。

親の世代が身をもって戦争の悲惨さを経験してきたのとは比べようもないが、私たち50代以上の世代にもバブル崩壊を目の当たりにしてきた体験がある。
だからこそ最近のビットコインをはじめとする仮想通貨の高騰には、皮膚感覚として危険性を感じることができる。
​しかしバブル崩壊後に産まれた若い人たちの目には、この状況がどのように映っているのだろうか。非常に心配になる。

もう一度、上の三枚のチャートを見直してほしい。永遠に価格が上がり続けるような物は絶対にないのだ。
​
こんな事いつまでも長くは続かない
いい加減明日のこと考えたほうがいい
~ RCサクセション「雨上がりの夜空に」
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