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クラッシュやスティール・パルスらがコミットし、1970年代から80年代にかけて展開された反人種差別の運動 “Rock Against Racism” について調べていく中で、発端となった1976年のエリック・クラプトンによる差別発言に辿り着いた。 エリック・クラプトンが人種差別発言を行ったということを薄々知ってはいたが、この機会に発言の原文を読んでみたところ、吐き気を催す酷いものであった。 私自身は40年以上にわたって彼のファンであり続け、当ブログでも「エリック・クラプトン 70年代の武道館セットリスト」を書き起こすなどしている。 しかしこの差別発言に関してあまりにも無知かつ無自覚であったと猛省するしかなかったので、その内容を記録しておくことにした。
エリック・クラプトンがライブ会場のMCで露骨な人種差別発言を行ったのは、1976年のイギリス・バーミンガムでのことだった。
事の一部始終は書籍「ロック・クロニカル 現代史のなかのロックンロール」(広田寛治著 河出書房新社)に詳しいので引用させていただく。 76年9月、バーミンガムで開かれたエリック・クラプトンのコンサートで、時間が凍りついてしまったかのような奇妙な静寂の時が流れたという。
この時の実際の発言そのものは様々な報道やサイトで断片的に掲載されており、またFacebookグループのComunidade Cultura e Arte がそれらを取りまとめている。
この中に出てくるwogsやcoonなどの差別語は、現在の欧米の報道ではwxxx、cxxxなどとマスクされるものであるが、ここでは敢えてそのまま引用しておく。 Do we have any foreigners in the audience tonight?
あまりにも酷い内容なのでとても全文翻訳する気にはなれないが、ざっくり要約するとこんな塩梅だ。
「この会場に外国人のクソ野郎はいるか?いるなら出ていけ。会場だけじゃない、国からもだ。よく聞け。エノック・パウエルに投票しろ。黒人やアラブ人やジャマイカ人は出ていけ。イギリスは白人のための白人の国だ。」 言うまでもなく、エリック・クラプトンはブルースでキャリアを開拓し、この発言の数年前にレゲエで復活を遂げた人物である。 その彼が黒人やジャマイカ人を差別し罵倒するとは。 さらに驚くべきことに、エリック・クラプトンはこの年、ボブ・マーリーのライブを観に行き、またフレディ・キングとセッションを行った記録が残っているのである。 1977年に発刊された写真集「エリック・クラプトン」(新興楽譜出版社)の巻末の年表には、次のような記載がある。 1976/5/25
当然ながらこの後、エリック・クラプトンは人種差別発言を生涯にわたって非難されることになった。
2017年に伝記映画 “Life in 12 bars” (邦題「エリック・クラプトン~12小節の人生~」)が制作されたが、この映画に関するメディアとのQ&Aセッションでも、1976年の人種差別発言について質問されている。 ローリングストーン誌に掲載されたエリック・クラプトンの発言は次のようなものだった。 根拠もなく半人種差別主義者のようだった。
一応反省の弁は見せているが、発言の前半は文字通り差別主義者の典型的な言い訳 “I have a black friend” である。
本当に反省しているのか、疑問に思わざるを得ない。 また差別発言をアルコールのせいにしているが、酔っているときほど本音が出やすいものではないのだろうか。
残念ながら “Rock Against Racism” を経ても、ロック・ミュージシャンによる人種差別発言が止むことはなかった。
近年ではモリッシーが差別主義者になってしまったことで知られている。 例えば2016年8月、モスリム系として初のロンドン市長となったサディク・カーン氏についてモリッシーは「ハラルを食ってる野郎が早口で話すからさっぱりわからねえ」と発言している。 また本邦でも最近、小沢健二が次のようなツイートを残している。
「圧死笑」。何なんだ。 いい加減にしてもらいたい。 再び「ロック・クロニカル 現代史のなかのロックンロール」から引用しておく。 歴史的にみれば、自国の植民地支配を正当化し、偏狭な愛国主義をテコに失業問題を人種差別の理由にする考え方こそが、世界中で差別を生み出してきた原因であったのだ。
なお “Rock Against Racism” の詳細は、HEAPSの記事「ステージとフロアの上でぶち壊した「音楽と人種の壁」パンクとレゲエ、白と黒が混ざり合った音楽ムーブメント、あの5年間」を一読いただければと思う。
20 コメント
BlackSesame
30/11/2019 20:48:38
"Yellow Monkey,HaHaHa"
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No Reason To Fry
4/12/2019 20:17:20
76年にはクラプトンは来日していませんが。
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Shoegazer
8/8/2020 01:02:26
どこにも来日公演なんて書いていないですけど
STARGAZER
15/8/2020 22:04:09
イギリスやアメリカの聴衆を前に"Yellow Monkey,HaHaHa"と言ったんですねw
クラハシヨシロウ
6/12/2019 13:54:20
バーミンガムで現場に居合わせたという事ですね。
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SNAOANS
3/12/2019 10:00:26
古くはワーグナーから、差別と音楽の関連を考える機会は枚挙にいとまがありません。だからこそ、音楽そのものとそれを作った芸術家の感性と、創造した製作者の品性は分けて考える必要があると思います。決して優れた人格が優れた音楽を奏でるわけでは無いのです。人間の業ですよね。
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NO REASON TO FRY
6/12/2019 23:01:58
ブログ主が上の記事中で引用されているクラプトンの人種差別発言全文ですが、これだけの長さのものを現場で発せられたとおり正確に文章に起こすとなると、スタッフもしくは客の誰かが録音したテープをソースにしていると考えるのが自然でしょう。
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NO REASON TO FRY
6/12/2019 23:08:29
(字数制限のせいか上の投稿が途中でカットされてしまいました。段落変更部分から再度UPします)
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あのさ
7/12/2019 23:26:36
引用元は全て文中に明記されてるようだが
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NO REASON TO FRY
8/12/2019 00:27:54
「この時の実際の発言そのものは様々な報道やサイトで断片的に掲載されており、FacebookグループのComunidade Cultura e Arte がそれらを取りまとめている」という部分、とくにその中の「FacebookグループのComunidade Cultura e Arte」を指して言われているのでしたら、それは元々の記事そのもの(一次資料)ではなく、そこに上がっている文章(クラプトンの人種差別発言全文)がこの時点ですでにどこかから引用してきたものです。オリジナルが掲載された媒体が私の意味する「引用元」なのですが、ここにはそのクレジットがありません。それがたとえば雑誌であると仮定して、誌名、そして掲載されたのが何年何月号で、記事を書いたのは、件の発言を文章に書き起こしたのは誰なのか、ということです。文責がどこに、誰にあるのかということですね。発言の持つ重大性に鑑みて、これでは責任の所在が曖昧に過ぎると私には感じられます。
久保田直己
8/12/2019 18:42:49
クラプトンのバーミンガムでの発言について検索すると、報道記事が山のように出てきます。ご参考までにいくつかどうぞ。
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NO REASON TO FRY
9/12/2019 20:21:07
ご紹介いただいたリンク先のページですが、そのどちらも、先年公開された映画『12小説の人生』に人種差別発言の場面が収録されている、と読めます。
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Set su ya
3/3/2020 16:10:15
確か、1974年の初来日の時、酔っぱらってステージに上がり、
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男根魂
6/9/2020 01:32:31
外タレがステージ裏や楽屋で日本人の事を猿呼ばわりして笑っているっていうのは何も珍しく無い光景です。
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NO REASON TO FRY
1/6/2021 12:13:51
前のコメント投稿から1年半が経ちました。『12小節(小説に非ず 笑)の人生』は未だに再見していません。1年半も何やってんだ、とお叱りを受けそうですが、最近新しい発見があったことを報告させていただきます。もはや誰もここ読んでないかもしれませんが(笑)。
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NO REASON TO FRY
1/6/2021 12:16:53
(続き)記事中、オーディエンスとして現場でスピーチを直接体験した数名の方の回想が出てきますが、うち二人(カリビアン移民で、現在小説家兼大学教授のキャリル・フィリップスと、のちにスカ/ニューウェイヴ・バンドのザ・ビートとジェネラル・パブリックの中心メンバーになったデイヴ・ウェイクリング)によると、クラプトンの人種差別発言は、その晩の流れの中で、だらだらと取り止めがなく散発的で、一気に捲し立てられたものではなかった、ということで一致しています。
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はっぱ
31/1/2022 14:47:47
最近、大好きだったエリック・クラプトンが過去に人種差別主義者のような発言を公の場で発していたと知り、その内容にとてもショックを受けて事の真意を確かめようと検索してこちらにたどり着きました。
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ねこかわいがり
6/3/2023 20:23:45
昨日ラジオでエリッククラプトン特集聞いて、深夜便ですが、レイラ以外もいい曲があるなあと思いパティさんとは大恋愛でも離婚したんだよねと思いつつ調べていったら、見た目と才能以外最低な人だとわかりました。
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Shu
30/5/2023 11:49:46
最後の小沢健二のツイートは日本の水や表面的な犯罪率(例えば夜中に出歩いても危なくない場所が多い)について改めて驚いているにすぎないと思いますが、レイシズムに何か関係あるのですか。
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