久保田直己 不撤不散
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可視化されないフリーランスの落とし穴

1/7/2018

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Photo by rawpixel on Unsplash

6月29日、参議院本会議でいわゆる「働き方改革関連法」が成立した。
これによって、残業や休日出勤に対する割増賃金が支払われない「高度プロフェッショナル制度」が合法化されてしまった。
「高度プロフェッショナル制度」の対象となる年収基準や職種の定義は、国会に諮らず厚生省令で変更できるため、タガの外れた「働かせ放題」制度になってしまう懸念を残したままである。
政府は「さまざまな働き方」などと口当たりのよい言葉を使っているが、既に労働者派遣法が修正されてから、正規雇用という働き方の破壊は進行している。
正規雇用の破壊で生み出される非正規労働、特にフリーランスは、収入の不安定さに加え、取引先に対して圧倒的に立場が弱いことも忘れてはなるまい。
ここでは、特に見落としがちなケースをいくつか挙げてみたい。

空発注

案件が確定していないにも関わらずフリーランスを集めて、案件が取れなかった時には即日打ち切りとする手口である。
会社対会社、組織対組織の取引でこんな話は耳にしたことがないので、立場の弱いフリーランスに狙いを定めてバッファーにしているのだろう。まったく卑劣である。

一例だが、某IT機器販社が、見込み客との間で契約が締結されていないうちから、フリーのエンジニアを囲い込んだことがあった。
二日目あたりから周囲の営業たちから「あの案件はヤバいかもしれない」という声が聞こえてくる。
そして三日目、結局契約に至らないことが判明し、「申し訳ないけど明日から来ないでいい」と通告されるのである。
こうした事例は契約前のトラブルとしても散見される。案件が取れそうだと餌を見せながら、ずるずると何週間も引っ張った挙句、結局契約に至らない。
その期間は当然ながら、フリーランス側の収入はゼロになる。
案件が固まっていない話には、安易に乗るべきではない。

契約無視

正規雇用の立場にいると信じがたい事態であるが、契約上の条件を無視した要求を受けることさえある。
全てのビジネスは契約に則って履行されるのが当たり前であるにも関わらずだ。
ソフトウェア・ビジネスであればライセンス数以上の使用は違反になるし、ミュージシャンが司会の仕事を契約したのであれば決して演奏することはない。それが契約である。
ところが大手企業の中で「ビジネスは契約に基づく」ことを理解していない人物を時折見かけるのはどうしたことだろう。

ところで民法上の委託契約は、納品物を確約する「請負」と、納品物を伴わない業務委託の「準委任」のどちらかになる。
フリーランスの現場常駐型の契約は「準委任」が基本で、さらに支払い条件によって、一か月の稼働時間の上限と下限を定めるケースと、時給払いのケースがある。
前者のケースでは、上限時間を超えれば追加の支払いが発生し、下限を切れば減額される。

さてここで、某システム・インテグレータの案件で、「準委任」による時給払いのケースを例に挙げてみたい。
契約上は、稼働した時間に時給を掛けた分が支払われる。精算をする上で、それ以上でも以下でもない。
ところが業務開始後、このシステム・インテグレータが「組織と組織の約束なので、月に160時間は稼働してもらわないと困る」と、追加条件を言い出したのである。
そんなことは契約上に書いてないし、現場の状況を勘案したうえで已む無く受けいれるとしても、少なくとも稼働開始前に確認しておくべき事項であろう。
そもそも「組織と組織の約束」とは何なのか。クライアントとシステム・インテグレータの間でそのような話があったとしても、その組織の外から契約しているフリーランスに求めるのは筋違いだ。
ところが契約の文言に無いことを指摘したところ、突如システム・インテグレータの現場責任者がキレて暴言を吐き散らし始める事態となった。
再度確認するが、ビジネスとは当事者双方ともに契約に則っていなければならないものである。
契約以外の条件を口頭でのませようとするのは、ビジネスの基本が判っていない、或いは判っていながら自分が負うべき負担を立場の弱い者へ押し付けようとしているのだろう。

​以上、いくつかの事例で示したように、正規雇用でない、特にフリーランスの場合、立場の不安定さだけでなく、目に見えない様々な差別的扱いを受けることが多い。
基本中の基本である契約すら顧みられないのであれば、いったいどうすればいいのか。
非正規労働に対する不当な扱いが蔓延したまま、これ以上の雇用破壊を許したら、社会は修復不能なまでに壊れてしまうだろう。
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